260 未来予測

 巨大な猪や狼、虎のような魔物。

 人間界には生息していない、魔力を餌にしている獰猛な個体ばかりだ。


 だが魔界の魔物にとって人間界の空気は毒みたいなものだろう。

 

 まず最初に、クマよりも数倍デカい魔物が真っ直ぐに駆けてきた。


 こいつらは鼻が利く。

 血が滴り落ちることで猛獣が引き寄せられるように、人間の魔力が好物なのだ。

 だが――。


「シンティア、魔力度外視でいくぞ」

「はい」


 数が多い相手への対抗策は、既に持ち合わせている。


黒い氷雨ブラックアイスレイン


 俺は、右手の平を屋上に向けた。

 以前習得した雨を改良したものだ。


 飛び出した魔力が黒い雲に変換されると、やがて雨のように落ちていく。


 だがその過程で魔法が付与、氷の槍が追加攻撃となる。

 並大抵の防御では防げない絶対零度が付いている雨だ。


「ギャアッアァアァァァ」

「プギィッァッアア」


 魔物の硬い皮膚でも例外ではなく、獣が悲鳴をあげた。

 だがそのとき、隠れている黒い人影を見つけた。


「シンティア、奥へ行かないように魔物をすべて頼んだぞ」

「ふふふ、とんでもないことを言いますね。――ですが、わかりましたわ」


 シンティアに魔物を任し、前へ突き進む。


 影から現れたのは、黒髪短髪、無骨な男だ。

 なるほど、こいつは原作通りか。


 まずはあいさつ代わりで魔法を飛ばすも、近くの魔物を盾にて防がれた。


「よォ、魔界人・・・、子供を引き連れて人間界で買物か?」

「……そんな感じだな。古代魔法具は、いくらで売ってもらえる?」

「悪いが非売品だ」


 俺の揺さぶりにも冷静に言葉を返す。

 軽い魔法斬撃を飛ばしたが、それを――日本刀・・・で弾いた。


 ハッ、おもしろい。


「どれだけ魔族のおつかいを聞いても、アタオラスの再建はかなわないぞ」


 だが俺の言葉に、は目を見開いた。

 しかし表情をすぐに戻し、魔物を足場にして飛んでくる。

 

 凄まじい速度だ。

 迷いが一切ない。


 «日本刀を振り下ろしながら風の斬撃を飛ばしてくる»


 未来を読み切るも、あえて避けない。

 不可侵領域バリアの事を今まで回避に使っていた。だがそれは時と場合による。


 今この場面では、攻めでこそ生きるだろう。


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