261 観察
「揺さぶりをしても無意味だぞ! ――なに!?」
奴の攻撃は俺には通らない。
直前でバリアが発動し、大きな隙ができる。
魔力は消費されたものの、これで終わりだ。
「――じゃあな」
回避行動は間に合わないだろう。
そして男は、左腕を差し出した。
男のバリアをぶち破り、服の繊維を引きちぎりながら肉、骨へと到達する。
だが手ごたえが随分と軽い。
不思議な感覚、しかし妙に覚えがある。
直後、男は風魔法を使って後ろへ飛んだ。
痛覚による表情のゆがみはなく、ただ驚いている。
体勢を翻しながら魔物を前方に送って来るが、シンティアが無言で氷を飛ばしカバーした。
「悪いな」
「いえ」
俺は冷静に
断面からは――魔力の漏出が見られた。
――そういうことか。
「何だ人間……その力は?」
「さあな。俺を倒したら教えてやるぜ。――
「……お前が、ヴァイス・ファンセントか。魔族から聞いてるぞ。やはり未来予知か? それとも……」
奴の名前は、ロズ・オルファト。
魔界、アタオラス国の――将軍だ。
それは、オストラバ王国に匹敵するほどの大国。
腕に自信があったはず。
だからこそ俺の力に驚いたのだろう。
だがそれより――。
『セシル、全員に通達しろ』
『何?』
『奴らは――ノブレスの訓練服と同じ服を着てる』
『――わかった』
おそらく倒しても強制転移されるだろう。
だが俺には
こいつを生け捕りにして人質にしてもいい。
アタオラスでの情報を奪うのもいいだろう。
ハハッ、最高だ。
久しぶりに悪の血が滾る。
「目、鼻、口、耳、人質としては何人分もできそうなガタイで助かるな。仲間も合わせると国への手紙は何通も出せそうだな? ロズ」
「……人間はやはり死ぬべきだな」
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