262 それぞれの戦い

「シャム、あんた既にボロボロじゃない!」

「うるせえピーチ。それよりあいつら……本当に人間か? あんな魔力の高い奴ら、初めてだぞ」


 ロズ様からの連絡が途絶えた後、私とシャムの前に現れたのは、大きな杖を持つピンク髪の女と私達と似た剣を持つ女。

 それと……女か男かわかんない綺麗な顔をしたよくわからない人間。


 ていうか――。


「何で魔獣が、あいつらの味方になってんのよ!?」

「知らねえよ!?」


 私たちの味方をする魔獣が、男女の手に触れただけで簡単に寝返っていく。

 あれはまさか使役? でも、あんなの魔界でも見たことがない。


 それに杖の女はとんでもない魔法を放ってくる。

 魔界で私たちは魔族以外には負けなかった。

 なのになんで、人間如きが!


「ボクたちには勝てない。諦めるんだ」

「降伏しなさい」

「諦めるがよい」 


余裕ぶった顔で、三人ともそう言いやがった。

 何も知らないくせに。


 人間は、たまたまこっちに生まれたから幸せに過ごしてるだけだ。

 私たち魔界人が、どれだけ苦労しているのか。


 なのにそうやって偉そうに!


「シャム、本気でやろう」

「あァ? いいのか? 極力被害は抑えろって」

「このままだと負けるよ」

「……ったく、どうなっても知らねえぞ!」


 ロズ様、ごめんなさい。

 でも、私たちは負けられない。


   ◇ ◆ ◇ ◆


「おいおいおいおいおい、リリス。東側でやべえ魔力溢れてねえか!?」

「――確かにこれは、凄まじいですね」


 あっちはカルタとオリンのところだ。

 何かすげえやりあってんな。


『デュークさん、リリスさん、悪いけど、魔獣の殆どをそっちに誘導したいみたい。お願いできるかしら』

『おう、任せとけ!』


「リリス、聞いたか?」

「はい! 大丈夫です!」


 とんでもない数の魔界魔物が次々とやってくる。

 だがこの道は絶対に行かせない。


 しかしリリスがいて助かったぜ。

 するとその時――。


「おいおい、何だこりゃあ」


 クソデカい魔物が、思い切り壁を壊しやがった。


 まるで魔物大戦争だ。


 しかも異質な魔力を身にまとっている。


「リリス、こいつは一味違うみたいだ。久しぶりにパートナーの連携を見せてやろうぜ」

「はい!進化した私たちを、魔界人に見せつけてやりましょう!」


 さあて、やってやるぜ。


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る