263 成長
僕とシャリーの前に現れたのは、小さな男の子だ。
だけど魔力が、異常なほど高い。
同時に、正面玄関から魔物の叫び声が聞こえてくる。
それでも動かないのは、彼から目を離すなと脳が危険信号を放っているからだ。
「――
すると突然、少年が地面に手を置いた。
その場に結界が出現し、僕とシャリーが囲われる。
その瞬間、あのときを思い出した。
ヴァイスが、僕とソフィアさんを守って前に出てくれた時の事だ。
隣に視線を向けると、シャリーが不安そうにしていた。
「大丈夫。むしろ好都合だ。あいつを、この中でやっつけよう」
「――そうだね。ありがとう、アレン」
魔力を漲らせ、
次の瞬間、僕は駆けた。
結界については、既にセシルさんから答えを得ている。
この中は、魔族や魔界人にとって内なる世界。
魔界と同じで、魔力が普段よりも扱いやすくなるらしい。
また、彼らは基本的に少人数で動いている。
人数差を作る為に結界魔法で覚えるのは、至極当然だと。
「ハッ、バカ正直に、これだから人間は、食らえ!」
カウンターを狙って、魔力砲を放ってきた。
とてつもない威力だ。
だけど――カルタさんほどじゃない!
「――人間は、成長できるんだ!」
僕は、視えない手を使って魔法を防いだ。
血反吐を吐きながらようやく模倣ができるようになった力。
付きっ切りで面倒を見てくれたエヴァ先輩の為にも、負けられない!
「――クッ」
そのまま一太刀浴びせると、少年の身体から魔力が漏出した。
さっきセシルさんが言っていた通りだ。
そしてその瞬間、地面から魔力の拘束糸が出現し、少年を囲った。
後ろに視線を向けると、シャリーが罠を遠距離で仕掛けたのだ。
僕たちは、強くなっている。
「……僕の名前はクロだ。それが、お前たち人間が聞く、今際の名前になる――」
「アレン」
「シャリーよ」
「……ふん」
「それが、君が最後に聞く名前になる」
ヴァイスは心配していたが、僕は守るべきものの為なら、たとえ相手が誰であろうと容赦しない。
もし強制転移するなら
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます