264 交渉

 俺がロズと戦っている間、シンティアが異常なまでの集中力を見せていた。

 氷壁を常に展開しながら、行き場を失った魔物を氷剣グラキエースと魔法で仕留めている。


 シャリーの付与も至る所に予め設置しているので、それもうまく使っていた。


「シンティア、引き続き頼んだぞ」

「任せてください」


 一体魔物がどれほど用意されているのか。

 それほどの数が押し寄せてきている。


『アレンくんシャリーさんが結界の中で戦闘中。カルタさんオリンくん、トゥーラさんが二人の敵と交戦中、デュークくんリリスさんがネームド魔物と交戦中、魔法具は問題なし』

 

 戦況がセシルのおかげで入ってくる。

 結界はかなり危険だが、今のレベルアップしたアレンとシャリーなら信頼できるだろう。


 ロズたちの訓練服の情報は既に周知されていると思うが、どうやら相手も本気を出してきたらしい。


 するとその時、日本刀がより強い魔力を帯び始めた。

 それは、視覚化できるほどの。


 どす黒い魔力、一太刀浴びれば不可侵領域バリアも破壊する。

 魔界特有の闇に近い魔力だ。


 だが――。


「悪いなロズ、お前は俺に勝てない。だが魔族の目的を答えれば、少しは長生きさせてやるぞ」

「さあな」


 当然だが、ロズは答えない。


 真っ直ぐ向かってきたかと思えば、バカ正直に剣を振り落としてきた。

 返し刀で右腕を落とそうとするが、無詠唱で黒い防御シールドが出現する。

 服からの自動か?


 近代化した国とは知っていたが、ここまで差があるとは。


「――未来予知か」


 すると驚いた事に、ロズがぼそりと呟いた。

 俺が二度回避したこと、左腕を落とされたこと、それがありえない。


 つまり、自分に絶対的な自信を持っているのだろう。


 奴は将軍、それも王国の右腕だ。


 これくらいはやってもらわないと、原作を超えたかどうかもわからないが。


 ――癒しの加護と破壊の衝動。


 地面が覆われると、魔物の魔力が全て力になる。

 だが例の如く溢れすぎてしまう。


 その為には――力を使い続ければいいだけだ。


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