206 思考

 深い森の中、オリンと並走していた。

 空の隙間、上空では四龍の一匹が俺たちを補足しているかのようにピッタリとくっ付いてきている。


 観察眼ダークアイのような器官か、それとも野生の勘なのかはわからない。

 攻撃を仕掛けてこないのは無駄撃ちを避けるためだろう。


 ひとまず姿を隠して呼吸を整える。


 今まで大勢の強敵と戦った。

 だが過去のどんな敵と対しても圧倒的すぎる力だ。


 純粋な魔力でいえばエヴァ・エイブリー以上だと思えばわかりやすいだろう。


 同時に四人相手した上で――勝つ。


 ハッ、乾いた笑いすら起きねぇ。

 あいつ・・・なら、不可能を可能にってほざくか?


 いや、流石に奴ですら諦めそうだ。


「オリン、怪我はないか」

「ボクは大丈夫。ありがとう。それより、はぐれちゃったね……」

「あいつらなら大丈夫だろう。むしろ、俺たちより身体能力が高い。どちらかというと気にしてるのは向こうかもな」


 続く二回目の攻撃で、トゥーラ、リリス、ビアドと分かれてしまった。

 俺たちは村、つまり外側。


 あいつらは内側だ。

 ぐるりと回ってくるには難しい断崖絶壁もあった。


 すぐにこっち側に来るのは、カルタでないと不可能だろう。


 選択肢は二つ。


 あいつらを信じて離れるか。

 四龍と戦うか。


 幸いまだ村に被害はない。


 これからの事は分からないが、今のところは竜の駆逐対象でなかったのだろう。


 だが水竜が受けていた謎の攻撃。

 最後の言葉からも、間違いなく人間から攻撃を受けたのだ。


 ただ疑問がある。

 

 普通の冒険者が攻撃したとは考えづらいことだ。


 生半可な攻撃ではダメージを与えるどころか、直前で離散する。


 相当な手練れしかありえない。おそらくミルク先生、エヴァど同等。


 ……魔族かもしれない。


 奴らの外見は人間と同じだ。

 もどきであれば魔力も人間と変わらない。


 何らかの使命、理由があって四龍を攻撃したという可能性がある。


 ……となると、このまま逃げるのはダメだ。


 少なくとも情報を得る必要がある。誰に攻撃されたのか。

 幸い奴らは言語を話す。


 俺たちじゃないと伝われば話を聞いてくれるかもしれない。

 生来は無害な連中だ。


 しかしそのためにはやらなきゃいけないことがある。


  ――――――――――――――――


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