229 体罰と信頼
「……プリシラさんは、バトル・ユニバースがお好きなんですか?」
「好き、と言われると分かりませんが、今の感情を言語化するならば、楽しいです」
屋敷の中はとにかく豪華絢爛だった。
驚いたのは、執事の数だ。
屋敷の大きさを鑑みると当たり前だが、それにしてもかなり多かった。
そして今、セシルはプリシラと戦っている。
これは俺が仕掛けたものだ。
奴隷紋は、その人間の感情を抑制し、行動を制限する。
契約の際に細かいルールを決めるらしく、人によっては他人と口を利くことすら許されない。
だがプリシラはそうじゃない。
ならばどこまで制限されているのかと思いセシルとの一局を頼んでみたのだ。
答えは問題なし。
ニールのルールは緩いらしい。
予想外だったのは、プリシラが予想以上の強さを誇っていた。
セシルの手が何度か止まり、俺も驚いていた。
だが――。
「負けました」
さすがのセシルに勝てるわけがない。
プリシラは、抑揚のない声と共に頭を下げた。
それでも俺から見てセシルはいつもより苦労しているように見えた。
「ありがとうございます。プリシラさん、とっても強かったです」
「いえ。
「……初めて? どういうことですか?」
セシルの質問に、プリシラがほんの少しだけ首傾げながら答える。
「そのままの意味ですが?」
「……それで今の強さ……なんですか?」
「強いかどうかはわかりません。ニール様がしているのを隣で見ていたことがあっただけなので」
ハッ、何てこと言いやがる。
だが俺はセシルと違ってそこまで驚いていなかった。
なぜならプリシラは、原作でセシルに次いでIQが高いと書かれていたからだ。
「凄い。ええと……プリシラさんさえよければ、もう一局しませんか?」
「え? 私は、構いませんけど」
そのとき、プリシラとセシルが俺を見つめた。
まったく、何のために来たんだ。
だがある意味では朗報か。
プリシラの感情は、ちゃんと残っているらしい。
だがそのとき――。
「やあ、お待たせしたね。わざわざ休日に尋ねて来てくれるとは、僕も先輩としてうまくやれているのかな」
扉を開けて現れたのはニールだった。
プリシラがすぐに立ち上がる。
「ニール様――」
次の瞬間、ニールがプリシラの頬をビンタした。
それにはセシル、流石の俺も驚く。
「勝手な事をするなプリシラ」
「……申し訳ありません」
「後輩たちに飲み物を用意しろ」
「はい」
普通ならやりすぎだろう。
だがプリシラは――。
「奴隷の自由度を上げすぎると自立心が芽生えすぎて困るね。粗相はなかったかい?」
「……ありません。むしろ、私が退屈しないように相手をしてくれていました。それに……私たちからすればプリシラさんは先輩です。手をあげるなんて……」
「はは、君は優しいんだね。でも良かったよ。盤面を見たところプリシラの負けみたいで。もし彼女が
さらにプリシラがバトル・ユニバースをした事がないことも当然わかっているだろう。
なのにこの自信か。
ある意味では一番性質が悪いだろう。
プリシラの資質をわかっている上でこの態度だ。
――――――――――――――――
あとがき。
ついにプリシラが登場しました。
天才コレクターセシルとタッグで乗り込むヴァイス、さてどうなる(^^)/
カクヨムコンの最終日、文字数も10万文字を突破しました!
どのキャラクターも魅力的に駆けているので是非みてみてください!
【異世界ガイドマップ】5.0★★★★★(57894件) を手に入れたので【クチコミ】を頼りに悠々自適な異世界旅行を満喫します
https://kakuyomu.jp/works/16817330669743197880
また、最終日で以前投稿した【異世界恋愛】の【短編】を投稿させていただきました。
1万文字で完結しており、なろうの上位にも入った作品なので内容には自信があります。
是非見てもらえるとありがたいです。
幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
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