363 鈍感ヴァイス
学園祭の準備は、滞りなく進んでいっていた。
大型試験はないが、その分座学が増えている。中級生にもなると魔法の原理についても多くなってきた。
セシルは未だ教えてくれないが、彼女が誰よりも先にいっていることはなんとなくわかっている。
いずれほかにもも飛びぬけたやつが出てくるだろう。
事実、ノブレス・オブリージュのおもしろさを底上げしていたのはそこだ。
魔法ってのは、ある意味で一辺倒だ。
炎を放つ、水を放つ。
しかしそれを1段階にあげる。
ルナの黒球やオリンの
そしてもう一人、俺が想像していたよりも随分と速く能力をあげた人がいた。
そしてそれは、驚きの人物だった。
「ヴァイス、これは……どういうことでしょうか?」
ある日の夜、二人で訓練していた。
最近のシンティアは、氷と治癒を掛け合わせる練習をしていたのだ。
それは、画期的な技だった。
自らを氷で纏うことで、防御力を向上させる。
ただそれだけでなく、常に回復力を底上げしているのだ。
例えるならばプリシラやニールがさらに固くなったようなもの。
はっ、もしかしたら一番の強敵は彼女かもしれないな。
そして――。
「魔法の組み合わせで爆発的な進化が起きたんだな。生半可な攻撃では、もう通らない」
「そうなのですか? ――嬉しいです」
「だな。これならもっと強く――」
「いえ、そうではありません。あなたの傍で戦えることが、嬉しいのです」
シンティアはいつも俺のことを優先してくれている。
それが、ありがたかった。
「シンティア」
「ヴァイス……」
俺は、近寄って彼女の肩を掴んだ。
そして――。
「氷の王女に決定だ」
「……え?」
氷を纏えるなんて想像も出来なかった。
これなら勝てる。コスを超えたコスプレができる。
つまりこれも原作の改変だ。
さすがシンティア、俺の婚約者。
ん? なんか睨まれてないか?
「どうしたシンティア」
「何でもないです」
女性心ってのは難しいな……。いや、なんか足元がひんやりと冷たく――。
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