209 作戦

 四竜は、火、水、風、地の攻撃を放つ。

 以前戦ったのはただの野良だ。天と地ほどの差があると思ったほうがいいだろう。


 だが強い奴らには絶対的な驕りがある。

 特に四竜は負けることなんて考えていないはずだ。


 攻撃を受けて激昂しているのがその証拠でもある。


 そこにチャンスがあるだろう。


 俺は、空の竜を見上げていた。


 風貌が分かりやすくて見分けがつきやすいのは幸いだ。

 奴は水、その隣には火、そう遠くない場所に風と地が見えはじめた。

 おそらくリリスたちが移動しているのだろう。


「デビ、今回の役目はさっき説明した通りだ。ビビるなよ」

「デビビ!」


 この戦いにおいて一番のキーはデビだ。


 ったく、この場所にセシルがいればなと頭に浮かんでくる。


 自分で考えることが普通だったことを忘れそうだ。


 そのとき、魔物の叫び聞こえた。


 おそらく合図だろう。


 トゥーラ、リリス、お前たちにも聞こえているはずだ。

 信じてるぞ。


 俺は、不自然な壁アンナチュラルと飛行魔法を使って空へ飛んだ。


 想像はしていた。だが驚くべきものをみた。

 ノブレス・オブリージュで終盤のオリンは、多くの魔物を従えていた。

 当然だが、ゲームの終盤は強さがインフレしていく。


 その最たる例が竜の使役だ。


 テイマーであるオリンは、魔物のリミッターを外し、特別な付与魔法を掛けることももできるようになる。

 生来強さに貪欲な魔物は、俺たちよりも強化魔法に適正がある。


 今も力を底上げしているのだろう。


 だが、凄すぎる。


「ハッ、オリンめ。もうアレンを超えたんじゃないのか?」


    ◇


 トゥーラとリリス、ビアドは、移動しながら空を見上げていた。


「リリス、悪いが私はヴァイス殿ほどの連発はできない。一回一回に時間がかかる」

「問題ありません。私も飛行魔法は少しくらいできますので」


 既に魔力は戦闘態勢に入っている。

 その時、魔物の悲鳴が聞こえた。


 ビアドが、予想通り・・・・だと声を漏らした。


「……凄いな」

「来たぞ。オリン殿ならやってくれると思っていた。リリス――ビアド」

「はい――」

「了解した」


 三人が木の上に飛ぶ。


 そしてまさに、三人は――驚くべきものを見た。

 同時に、耳をつんざくほどの魔物の悲鳴が聞こえる。


「はっ、オリン殿は一体何をしたんだ」

「……凄すぎますね」


 とてつもない死線をくぐってきたトゥーラとリリスでさえ絶句する。

 ビアドに至っては、目の前に光景が信じられず、恐怖で身体が震えた。


 百体以上の魔物が、空に向かって飛び上がっている。

 飛行タイプの魔物はもちろんのこと、地走魔物には飛行魔法が付与されていた。

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