210 足場

 魔物たちに気づいた四竜の一匹、水竜が魔力砲を放つ。

 とてつもない威力の水が魔物にぶち当たると、大勢が跡形もなく消える。


 だが次の瞬間、トゥーラとリリスは見た。


 魔物の影から飛び出す男の影を――。


「リリス、行くぞ!」

「はい!」

「凄すぎるだろ……」


 トゥーラが、小さな不自然な壁アンナチュラルを空中に出現させ飛ぶ。リリスに思い切り踏み込んで高く舞い上がり、ビアドが続く。


 高く舞い上がっていたまさにその瞬間、影から飛び出した男の剣が伸び、水竜の怪我を更に広げ、竜は悲鳴を上げた。


「グォオオオォオオオ、この、卑怯な人間め!」


 それに対し、男――ヴァイスは不敵な笑みを浮かべた。


「悪いな。俺はそれが売りなんだ」


 ノブレスでは連携を重視している。

 どんな構成になっても、それぞれの役割を叩きこむため、反復行動を繰り返す。


 オリンは、誰よりも高く空を飛んでいた。

 飛行魔物のに背に乗った上で、更に自身の飛行魔法を使っていたのだ。


「ありがとう」


 そういってオリンは飛び降りると、激昂している水竜の背中に飛びついて――使役を開始した。


 複雑な感情が、記憶が、オリンに飛び込んでくる。


「――――くっ……」

「き、貴様なにを――我を使役しようだと――クソ、力が――」


 次の瞬間、オリンは右手を更に光らせた。

 それも水竜と同じ水色に。


「――ここから離れてほしい」

「ふざけるな! 人間どもめ――」

「わかった。――なら、力づくでの」


 そのまま右拳を振りかぶり、力の限り殴りつける。

 その瞬間、固いはずの鱗がはじけて飛んだ。


 それに合わせて、トゥーラとリリス、ビアドが同時に攻撃した。


 火、風、地の魔法攻撃が飛んでくるも、同士討ちを恐れて攻撃範囲が狭く、全員が難なく回避した。

 

 ヴァイスが――叫ぶ、


「それぞれ足場・・を使いながら動け!」

「「「了解!」」」


 その言葉の後、ビアドは見た。


 大勢の魔物が、等間隔に飛行しながら様子をうかがっている。


 魔物は囮を兼ねた足場だということに。


 そして声を漏らす。


「ハッ、ノブレスこいつら、どんな訓練してやがんだ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る