211 極限状態
スポーツの世界では、ゾーンと呼ばれる状態がある。
集中力が非常に高まり、周りの景色や音などが意識の外に排除され、自分の感覚だけが研ぎ澄まされることだ。
最高のパフォーマンスを発揮し続けることができる、と思えばわかりやすいだろう。
俺は、そんなものなんて眉唾ものだと思っていた。
だがおそらく、今まさに
「人間どもが!」
火竜のとてつもない業火を、
その間にも絶えず防御を身体に覆わせていた。
ほんの少しダメージを受ければ死に至る緊張感、高揚感、ある種の全能感に満ち溢れている。
「リリス、右上に飛べ! トゥーラ、左に避けろ! オリン、上からの攻撃を回避しろ!」
魔眼を常に発動させ未来予知、仲間の動きを
といっても実際に動くのはこいつらだ。
細かい部分まで説明している暇なんてない。
自分で考え、行動し、最適な動きで攻撃を回避し、反撃を返す。
ビアドも頑張ってくれているが、あまりの攻撃の手数と魔力不足による魔力欠乏症、つまりチアノーゼのような症状が出ている。
「なぜ、なぜ当たらぬ!!!」
「さあな、お前らが遅いからだろ」
ダメージは確実に蓄積している。何度か同士討ちさせたことで、風竜の魔力が著しく弱まっていることもわかった。
とはいえ最後まで油断できない。
こっちは百回攻撃を当ててようやくという程度だ。
なのに向こうは、たった一度当たればいい。
笑えるほどの理不尽、だがこれがノブレス・オブリージュ。
そのとき、トゥーラの顔面に竜の爪が迫りくる。
魔眼を発動していない二体目、剣の腹を横にするが、受けきれないだろう。
「デビビ!」
しかしデビが、トゥーラに向かって突撃した。
おかげでギリギリで回避、だがデビは直撃を受けて離散する。
「デビ殿!」
「気にするな。またすぐ復活する」
謝罪は必要ない。あらかじめデビには伝えていた。
俺たちを守る為に動けと。
再復活時間は以前と比べて格段に上がっている。
とはいえ、数分以上はかかる。
その間は、誰も死なないように動かなきゃいけない。
四竜は攻撃を受けて気が立っている。
俺たちがここで足止めしてなきゃ、間違いなく村は崩壊していただろう。
――――――――――――――――
あとがき。
戦闘にそう時間はかからないと思ったけど、もうちっとだけかかりますw
とはいえ、ラストまで既に決まっているのでお楽しみに(^^)/
このたび新連載を始めました。
異世界ガイドマップというスキルを得た主人公が、クチコミや様々なスキルで旅をするお話です。
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