幕間、xxx周目。

 中級生に上がった俺は、相変わらずの面子に少し飽きていた。


 バカ真っ直ぐなアレンに、その傍を離れないシンティア、脳まで筋肉のデューク。


「アレン、今日は忘れ物してないですよね?」

「あ……ごめんシンティア」

「もう、気を付けてくださいね」

「クソォ! なんで俺に婚約者はいないんだああああああああ」


 ったく、毎回毎回、飽きもしねーでいちゃつきやがって。


 そのとき、誰かが俺の背中を叩く。ま、わかっているが。


「ヴァイス、おはよーっ」

「ああ」

「相変わらず冷たいねえ」

「朝は眠いのが普通だろうが」

「ふふふ、そうかもね」


 いつものように、シャリーが笑みを浮かべていた。

 こいつを助けられたのは偶然だが、まさかこんな懐かれるとは思わなかった。


 猫みてえだな。


「ヴァ、ヴァイスくんおはよう」

「ああ」

 

 と、思っていたらもう一人、退学する予定だったはずのカルタだ。

 気まぐれに虐めっ子どもに文句を言ってやったら、何を勘違いしたのか助けたと思われた。

 

 それ以来、いつも俺に話しかけてきやがる。


 ま、おかげで飛行魔法を教えてもらえているが。


「いい天気だなァ。今日もバックれるかァ」

「ダメだよ。今日はテストだし」

「そんなもんどうでもいい。やる意味もない」

「またそんなこという」

「でも、ヴァイスくん本当にいつも満点だよね。すごい」

「あれよあれ、勉強してないっていいながら、夜に必死に復習してるタイプよ」


 好き勝手言いやがって。

 まあでも、カンニングみたいなもんだしなァ。


 抜き打ちテストなんて、俺からすればただの予告テストだ。

 そもそも、今日はそんなもんないけどなァ。


「ほら、いくよいくよ」

「おいシャリー、触んな」


 階段を上がって左端、いつもの教室の扉を開くと、オリンとトゥーラがいた。


「オリン、ピピンの好物を持って来たぞ!」

「ええ、いいの!? あ、アレンくんだ!」

「アレン殿、今日もカッコイイな!」

「ありがとう。二人はいつも仲良しだね」


 ったく、毎回毎回同じ会話しやがって。

 その隅っこでは、一人で駒をいじってる眼鏡がいる。


 ――セシル・アントワープ。


 あいつにいたってはしゃべりもしねえ。

 ったく、何考えてんのかわかんねえやつだぜ。


「おはようございます。みなさん、今日はテストでしたが中止です」


 そしていつものようにクロエが入って来て、突然そんなことを言いやがった。


 ま、何を言うかは知ってるがな。


「昨晩、オストラバ王都の舞踏会の近くで魔族の襲撃がありました。ソフィア姫が亡くなられたのです」


 大満月の日、ソフィア姫は死ぬ。

 何度か助けようとしたがダメだった。


 生徒たちはざわめき、そして怯えていた。

 魔族が怖いのだろう。


 バカが。あんな奴らただの雑魚だ。


 魔王に比べたらな。


「大事をとってノブレスは休みとなります。希望者は自宅に帰宅することもできますが、A級以上の冒険者護衛を付けてください。魔族の足取りが分かり次第、授業を再開しますが、数日はかかる予定です」


 そして授業はお開きになった。

 ソフィア姫は、馬車の中で無惨にも殺されている。


 だが何度やっても無理だった。……仕方がない。


 中庭に出ると、いつものようにサボっている二人を見つけた。


「よお先輩」

「ん、なによヴァイス。ちゃんと勉強してるの?」

「お開きだ。エレノア、相変わらずでけぇなあ?」

「え、な、なんのこと!?」

「おっぱいよ、おっぱい。ヴァイスは変態よ」

「え、えええ!?」


 ったく、相変わらずウブなやつだな。

 アレンのピンチに駆け付けて留年なんて、情けねえが。


 つええくせに、その才能を鍛えない姉妹。

 

 もったいねえ。


「シエラ、エヴァの足取り知ってるか?」

「知らないわ。自主退学してから誰とも連絡とってないんでしょ?」

「わ、私も知らない」

「そうか」


 あいつが残っていれば、もう少し変わるんだろうがなァ。

 もしくは見つけ出して仲間にしたいが、難しそうだな。


 その場を後にし、俺は市街地Bのとある屋上で眠っていた。


 ここが一番気持ちがいい。


 ふと目を覚ますと、誰かの膝の上に頭が乗っていた。


「おはよう、ヴァイス」

「シャリー、お前はストーカーか?」

「だって、いつもここじゃん」

「まあな」


 いつもと同じ青い空。だが、いつ見ても綺麗だ。


 これから先、誰かが死ぬことになるだろう。

 前回よりも強くなったが、どうなるかはわからない。


 誰を守れるのか、そして、誰が生き延びれるのか。


「なあシャリー」

「んー、どうしたの」

「死ぬなよ。絶対に」

「……いきなりなに?」

「約束しろ」

「はいはい、死にませんよー」

「はい、は一回だ」

「はーい」



 はっ。


 今回は絶対に勝ってやる。


 魔王クソ野郎、まっとけよ。


 その時、声が聞こえてきやがった。


 アレンとシンティアとデュークが、こんな時にもかかわらず訓練してやがる。


 ったく、脳筋野郎どもが。


「ふぁああ、そろそろ運動でもするか」


 上体を起こし、建物の上からアレンを見下ろす。


「もう、ちょっかいだすのやめなよー。アレンは楽しんでるとこあるけど、シンティアさんがまた怒るよ」

「はっ、それがおもしろいんだろ」


 そのまま飛び降りる。ふわりと風が、俺の身体を宙に浮かせた。


 ――ったく、空を飛ぶときは、毎回ワクワクしやがる。


 そのまま俺は、アレンに手を向けて、魔力を漲らせた。


「3vs1ぐらいがちょうどいいよなァ」


 その瞬間、カルタの魔力砲と同じ大きさの波動が飛んでいく。

 だがそれに気づいたアレンが剣を構え、シンティアが氷の盾で防いだ。


「おいヴァイス、俺たちを殺す気かー!」


 そしていつもの筋肉が騒ぎ立てる。


「あァ、その通りだ」


 俺ができるのは、お前らを少し鍛えるくらいだ。


 だから、強くなれよ。


 で――死ぬな。



 今回こそは。


 俺が、必ず何とかする。



 頼むから、死なないでくれ。



「寝起きの運動だ。遠慮せずかかって来い」


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