280 紹介

「ふふふ、そういえばルナさんの魔法、凄かったですわ。あのアレンさんが追いつめられていましたものね」

「凄かったです! 私もあんな独創的な魔法を使いたいです!」

「だな」


 何を考えているのかはいまいちわからないが、この場から離れないってことは大丈夫だろう。

 次の座学では、ルナはシンティアとリリスと並んで受けた。

 

 授業中ではカルタと一緒の班となり、俺はルナを紹介した。


「よろしくお願いします。ルナさん」

「……よろしく」

「カルタは今でこそ明るいが、前はもっと静かだったんだ」

「ふふふ、懐かしいね」

「ルナとは気が合うとおもう」


 静かに上目遣い。

 次にシャリー、セシル、トゥーラ、アレンやデューク、オリン。

 それぞれの印象やルナの事を伝えた。


 夕方、授業が終わると、ルナが俺の服の袖を引っ張った。

 シンティアに目配せしたが、微笑んでいた。


 二人で離れると、彼女が怯えながらも尋ねてくる。


「どうして私に、みんなを紹介したのですか」

「……俺はこの学園で一番になりたいと思っている。今よりももっと強くなる為に。そしてあいつら同じことを考えてる。――ルナ、お前との約束を破ったことは紛れもない事実だ。シンティアとのことは大切な婚約者であり、それは変わらない。こればかりは弁解のしようもない。――本当に申し訳ない」


 俺はしっかりと頭を下げた。もっと深く考えていれば防げたはずだ。

 過去の記憶を思い返し、何か忘れたりしていないかと。だから、俺の問題でもある。


 ルナは涙を流していた。

 しかし、俺の顔をあげさせようと両手を掴んだ。


「ヴァイ君は悪くありません。……私も、心のどこかで子供のころの約束を真に受けるなんてと思ってました。ただ、弱気な自分に言い訳をしていただけです。待っていれば……いつか……と。自分から声をかければよかったんです。ありがとう、正直に話してくれて」


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