197 アレンの決意②


エヴァ・・・先輩、この前はありがとうございました。おかげで、大勢の命が救われました」

「ふふふ、気にしないで。私は自分の為にやっただけだから。他人の命なんて、まったく興味がないの。それにおかげで、旧友とも会えたしね」

「……あの人たちは何者なんですか?」

「さあ? またいずれ会うことになるだろうし、その時わかるんじゃないかしら」


 エヴァ先輩は語らない。

 色々考えているのだろうけれど、ただ静かに未来を見据えている。


 メロメロンジュースを飲みながら、本題に入る。

 ダメで元々だ。どうせなら、元気よく行こう。


 よし。


「エヴァ先輩! 僕は強くなりた――」

「いいわよ」

「……え?」

「? だから、いいわよ」

「え、まだ何も言って――」

「あなたは分かりやすいのよねえ。熱血で、前しか見てなくて、貪欲に一つを追い求めてる。強くなりたいんでしょ?」

「え、そ、そうです! だから、僕と手合わせして――」

「それは面倒だから嫌ねえ。でも、強くさせてあげることはできるわ」

「……いいんですか?」

「今は暇だから。あなたのおかげで、探す立場から待つ立場になったわ」


 よ、よくわからないが、どうやら僕の伝えたいことはわかってくれているらしい。


 僕の知っている中で一番強いのはエヴァ先輩だ。手っ取り早く、というわけじゃない。

 普通に努力してるだけじゃ追いつけない。勝てない。


 魔物にも、魔族にも。


 ――ヴァイスには。


「そうねえ。まずは西の戦争を止めに行きましょうか。その後はS級賞金首を探しましょ」

「……え? そ、それって本気で――」

「やめてもいいのよ?」

「や、やります! ――やらせてください」


 僕がそう言うと、エヴァ先輩は不敵な笑みを浮かべた。


「ふふふ、その顔好きよ。――全部終わって生きてたら手合わせしてあげるわ」

「は、はい!」

「じゃあ行きましょ。あ、ご馳走様」

「え? あ、は、はい! 任せてください!」


 エヴァ先輩がその場を後にしたので追いかけようとすると、店主に捕まる。

 あ、ご馳走様ってそういうことか。


「これじゃあ足りないよ。ベークトチーズ5個とメロメロンジュース10杯もだ。後、ごつ盛りポテトフライ三皿」

「え? そ、そんなに!? は、はい!」


「ほらアレンくん、おいでー」

「はい!」


 と、とにかく――。


「エヴァ先輩、よろしくお願いします!」

「気にしないで。私も暇だったから。その代わり、死んでも文句言わないでね」

「……死んだら文句は言えないと思いますが……」


 とにかく頑張って頑張って、頑張るんだ。


 もう、後悔はしたくない。


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