198 優秀な面子

 夏休みエスタームの終わりが一週間と迫った日。


 原作、ノブレス・オブリージュでも比較的に落ち着いた期間でもある。

 胸糞悪い奴隷商人たちを倒すこともできたし、魔眼の使い方、飛行魔法も随分と上手になってきた。


 学園での試験を重ねて、魔族対決本番も待ち遠しい。


 しかし俺は、屋敷で過ごしてはいなかった。

 その理由は、お転婆娘からのお願い・・・だ。


 馬車に揺られ揺られて降り立つ。

 目の前には、懐かしいカルロス国の城壁が高くそびえていた。


 門のすぐ近く、まだ俺たちが魔族と戦った痕跡、地面が抉れている。

 いつ何時なんどき襲われるかはわからない、そんな気持ちを思い出させてくれる場所だ。


「ヴァイス様、すぐに入国できるみたいですよ!」

「ありがとうリリス」


 俺の横には、従者をしてくれている彼女のみ。

 シンティアとは七日ほど一緒に過ごしたが、医療最先端の勉強をする為、海を渡った。


 心配はしていない。

 なぜなら、護衛にミルク先生とココが付いているからだ。


 今回は、ノブレス学園の授業についての今後も兼ねているらしい。

 いつしか才能ある子どもたちに治癒魔法も伝えたいとのこと。


 これは原作にはなかった。

 おそらくだが、シンティアのおかげだろう。


 彼女がいなければ魔族と対抗できていなかっただろうし、知らないうちに改変している勤勉さには頭が上がらない。

 

 そのとき、馬車から聞きなれた声がした。


「久しぶりだねえ。ボク、なんだかドキドキするよ」

「確かにそうだな。だが自らを振る立たせてくれる気もするぞ」


 明るい天然声と、低いがしっかりとした女性の声。

 すぐに視線を向けると、そこに立っていたのは――。


「あ、ヴァイス君だ!」

「おお、久しぶりだなヴァイス殿、夏休みエスターム期間中に会うとは」


 リリスがペコリと挨拶するも、俺は頭を働かせていた。


「おそらくお前らと同じだ。頼まれたんだろ。オリン、トゥーラ」

「え? あ、じゃあヴァイス君も一緒に? 良かったぁ。安心だね」

「うむ。心強いな!」


 二人は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 内心では、ある意味俺も同じ気持ちだった。



 なるほど、確かに今回の任務・・には適任だ。

 ソフィアめ、しっかりと考えてやがるな。


 流石の俺も最終日近くは怠惰に過ごしたい。


 できるだけ早く、ドラゴン・・・・を退治するとしよう。

 


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