295 隙ありヴァイス

「来たぞ。標的・・だ。一斉攻撃ではなく、時間差で狙う。一撃でも与えたら私たちの勝ちだ」

「勝ち負けなんですか、これって?」

「当たり前だ。勝負とは常日頃行われているものだからな」


 なんだか言いくるめられている気がするも、ヴァイスをじっくりと観察した。

 だがそのとき、しびれを切らしたのか、デュークが飛び出して攻撃を仕掛けた。


「食らえ、上腕二頭筋フルスイングだ!」


 彼らしい真正面からの攻撃。

 ヴァイスは気づき眉をひそめるも、不可侵領域バリアがそれをはじいた。


「ついに脳みそまで筋肉になったのか。お前が言葉を話せるのも、これで最後か」

「ハッ、よくみろヴァイス」

「あ? てめぇ殺されて――何だこれは……腐食だと?」


 ジュクジュクとバリアが崩れていく。

 凄い。このコンボ、普通に最強じゃないか?


「隙ありヴァイス!」


 いつのまにか空にいたシャリーが、空から風船を投げつける。


「ほう、お前もどうやら死にたいらしいな。遺書は必要ないだろう」


 それに気づき、おそろしいほどの魔力を漲らせる。

 次は僕の番だと思っていたが、ミルク先生が飛び出し、まさかの三連撃をお見舞いした。


 バリアが崩れ落ち、ヴァイスが姿を現す。(あらわしてたけど)


「ほう、私も遺書を用意した方がいいか?」

「……そういうことか。悪ふざけがすぎますよ」

「人生は暇つぶしだ。それに、油断しすぎじゃないのか?」

「何が――」

「ヴァイス、今日こそ僕の勝ちだ!!!」


 背後に回って飛び出すと、風船を顔面に投げつけた。

 何も守るものはない。


 勝った――。


「デビビビ!!!」


 だが次の瞬間、突然、デビが現れた。

 小さな盾で防ぐと、ものすごく憤慨している。


「デビィ? デビビ。デービデビデビ!」

「ああ、カス相手にそう怒るな」

「デービデビデビ? デビビ!」

「あいつらはバカなんだ。わかるだろ?」

「デビビ」

「そうだな。眠ってろ」

「デビィ~」


 僕にも身体を強化してくれるユニコーンがいる。

 しかし、ヴァイスとデビみたいに意思疎通は取れない。


 ルナさんと修行をしているのは知っているが、一体どんな――。


「あれ……ミルク先生はどこ? デューク」

「そういや、いねえな」

「……う、嘘だよね」


 震えながら視線を戻すと、おそろしく僕たちを睨んでいるヴァイスがいた。

 え、魔法剣デュアルソード構えてない?


「今までありがとうな。お前らとの日々、楽しかった」


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