310 ミステリアス

 試験は実戦とは違う。

 俺は何度もそれを体験してきたし、理解してきた。


 一つ一つに柔軟な考えが必要だ。セシルはそれをわかっているだろう。


 敗北や失敗は成長の糧というが、それは当人が強く意識し、前を向き、努力しなければ意味はない。


 ただの口だけでは意味がないのだ。


 だがセシルは俺の知らない所でも、知っている所でも努力していた。

 たった一度の敗北にもかかわらず、彼女にとってはとても大きいものだったのだろう。


「安心してファンセントくん。私にも秘策があるから」

「……能力か?」

「ふふふ、秘密よ」

「何だ、教えろ」

「嫌よ。私だって、何でもかんでもあなたの言う通りじゃないわ。それに、ミステリアスって、いいもんでしょ?」


 静かに微笑みながらトゥーラたちに声をかけにいくセシル。

 はっ、確かに彼女の言う通りか。

 何でもネタバレしすぎは楽しくない。


 俺も、とっておきが残ってるしなァ。


「――ハァハァ」

「おいルナ」

「は、はい!」

 

 隠れているルナを呼びつける。

 相変わらずの野暮ったい髪だ。

 俺は、シンティアに目配せした。


 彼女は微笑み、許してくれる。


 事前に頼んでいたのだ。これだと、邪魔だからな。


「つけておけ」

「え、こ、これ……ってわ、わたしに?」

「髪止めだ。魔力でコーティングしてある。前髪が邪魔で戦闘力が落ちたら嫌だからな」


 ―――――――――――――――

【あとがき】

 文字数短くてすみません……( ;∀;)

 試験中は出来るだけ文字数を増やしたいので、毎日更新で続けるか、二日置きで文字数増やすか悩んでいます!


『怠惰な悪辱貴族に転生した俺、シナリオをぶっ壊したら規格外の魔力で最凶になった』

 発売日:2024年3月29日(火)

 (紙本&電子共に予定)

 

 【Amazonリンク&イラスト付き】

 https://twitter.com/Kikuchikaisei/status/1755186344601804896


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