221 リリスの告白

 ニールとプリシラが消え、その場は解散となったが、アレンはまだ気にくわなそうだった。


「先生、あいつは――」

「アレン、ニールに関わるな。お前とあいつは合わない。ヴァイス、お前もやめておけよ」

「俺は関わってませんよ。ただこのバカが朝から目障りだっただけです」

「何だって、ヴァイス!」

「やめろアレン、お前も本当はわかっているはずだ。ヴァイスに助けられたことを」

「…………」


 原作でニールとミルク先生のかかわりはほとんどない。

 とはいえ冒険者と騎士をやっていたのだ。知らないはずがない。


 騒ぎが治まり、シャリーとデュークがやってくる。

 事情を誰かから聞いたのだろう。


「アレン、大丈夫!?」

「ああ、何ともない。けど……」

「アレン、あいつには関わるなよ」


 当然だが、シャリーもデュークも知っているらしい。


「ヴァイス、気を付けろよ」

「わかってますよ。――シンティア、リリス、行くぞ」


 ミルク先生に断りを入れ、その場を後にする。


「ヴァイス、ニールという人は有名なのですか?」

「ああ、知らないのか?」

「わかりません」

「知らなくていいことだ」


 シンティアが知らないのも無理はないだろう。

 同じ貴族ではあるが、品行方正で生きてきた彼女の耳に入ってきていないのだ。

 

 その横、リリスは少し俯いていた。


「教えてください」


 俺は答えるかどうか悩んだ。

 原作を考えると、シンティアの根っこはアレンと同じに決まっている。

 余計な揉め事を増やしたくはない。

 だがその真っ直ぐな目、何度も真実を話してほしいとお願いされてきた。


 そして俺は、ニールとリリスの関係性を知っている。

 この世界に来てリリスが元暗殺者だと知った後に教えてもらったのだ。


 そのとき、リリスが私から、と声を上げた。


「彼は……アルバート家は、この世界で最も大手の合法奴隷商人です。敵にすればとてもおそろしい人ですが、味方となるとあれほど頼りになる人はいません。飴と鞭の使い分けが上手で、狂信的な部下が大勢います。もしあそこでヴァイス様、ミルク先生が間に入っていなければ、アレンさんの命が狙われていた可能性があると思います」


 リリスがここまで感情的に話すのは珍しい。シンティアもそれをわかったのか、驚いていた。


「……そういうことなんですね。でもどうしてリリスは、彼をそこまで知っているのですか?」


 シンティアの問いかけに、リリスがハッキリという。


「私が昔、彼の元で働いていたからです」


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