328 恩師②(アレンside)

 視えない手を扱うまでに多くの時間を使った。今でもまだ使いこなせていないが、それでも圧倒的な手数が増えた。


 僕には得意な魔法はない。体術も剣術も普通くらいだ。

 でも、大勢の人たちの力を模倣してここに立って居られている。


 僕がやられると、それは多くの人の力を借りた上で負けたことになるだろう。


 それだけは許されない。それにダリウス先生、あなたにも認めてほしいんだ。


 どれだけ強くなったのか。今、どれだけの力を得たのか。


 ――ヴァイス、君も同じ気持ちなんだろう。


 きっとミルク先生と笑いながら戦っているはずだ。


 だったら僕も、大きな歯を見せながら、めいいっぱい楽しんでやる。


 でもこれは試験だ。


 当然、手段は択ばない。


「シャリーは祠の術式の解除に専念してほしい。僕とデュークで、ダリウス先生を無効化する」

「ハッ、アレン、お前がそんなことを言うなんてな。いいぞ、いつでもかかってこい」

「戦うことは面白いってわかったんです」

「いいねえアレン! 久しぶりに連携すっか!」


 ダリウス先生の性格上、シャリーを一番に狙うことはないだろう。

 けれども気を付けなきゃならない。


 祠を一目見て気づいたが、これは単純な戦いじゃない。


 祠を壊すには、力と解析力、そして発想力もいる。


 シャリーは天才だ。でも、ココ先生はそれを上回る。


 もし祠を壊せないなら、ダリウス先生を倒さなきゃいけない。


 不可能を可能に。


 僕なら――絶対にできる。


「行くよ、デューク!」

「おうよ!」


 

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