191 猫猫天国

 夕方過ぎ。

 メロメロンや事業について教えてもらったあと、山で飛行魔法を教わっていた。

 魔法の杖に跨りさえすれば、カルタはノブレスで最も優位に立つことができる。


「にゃおにゃおお」

「にゃごーーん」

「にゃお?」


 そんなカルタの練習方法は――。


「何だこの猫遊園地は……」

「にゃんこさんたちね、空が好きなの。だからこうやって交代で高く飛ぶんだ」


 創作物もびっくり、猫を抱えて飛ぶ、の繰り返しだった。

 目的がないよりはいいだろうが、それにしてもメルヘンすぎる。


 とはいえ猫は繊細な生き物だ。

 液体みたいにするする落ちていくし、もし体勢を崩せば真っ逆さま。


 つまりバランスを要する。


 なるほど……カルタめ、理に適ってるじゃねえか。


 ふわりと降りてくるカルタ。

 次は、俺がやると強く言い張る。


「行くぞニャン太郎背中に載れ」

「にゃ、にゃ……」

「ヴァイスくん、大丈夫……?」

「当たり前だろ。おい、ニャン太郎、乗れ」


 真っ黒い猫が、なぜか俺を見て怯えてやがる。


「ったく、なんかお前誰かに似てんな」

『デビビー!?』


 幻聴を無視しながら猫を抱きかかえる。

 背中にぽんっと移動する猫。カルタの杖を貸してもらう。


「私も行かなくていいの?」

「ああ、最悪の場合、こいつだけでも助けるよ」

「にゃああ!?」


 なんだこいつら言語わかってんのか?


 そんなことを考えながらも飛行をイメージする。

 自然と足が地面から離れていく。

 俺もいい加減上手になってきているみたいだ。


 といっても、高さはそれほどじゃないが。


「にゃにゃああ」

「はっ、喜んでるのか」


 山の上だけあって景色が綺麗だ。

 なるほどな、こんなご褒美・・・があるなら頑張れるわけだ。


 そのとき、あるものを見つけた。


 俺は動揺して体勢を崩す――。


「にゃにゃ――」

「お、おい暴れるな」

 

 猫が暴れまくるも、なんとか地面に降り立つ。

 だが顔面に爪の跡が残ってしまう。


「ヴァイスくん、だ、だいじょうぶ?」

「……自然治癒には定評がある。それより、来たみたいだ」

「あ! じゃあみんなで夕食だね! ほら、行こう?」


 そういって、カルタは杖の後ろをぽんぽん。

 無言で乗ると、そのままビュンッと凄い勢いで飛んだ。


「お前、何気に俺のプライドと気にしてないよな」

「――え? なんかいった?」

「何でもない」


 まあでも、超えたいと思う壁が身近にあるのはいいことだ。


 さて、婚約者を迎えにいかないとな。

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