190 ウィオーレ家、母親エヴィリ。

「あなたがファンセント君ね。よくカルタが話してるわ。凄い、凄いんだよーって」

「お、お母さん!? な、何言ってるの!?」


 ウィオーレ家の屋敷は、王都から少し離れた郊外にある。

 広大な面積で農業をやっている珍しい貴族だ。


 裏には広大な森が広がっていて、俺が知っている原作だと強さの秘訣はそこにある。

 飛行魔法、魔力感知、カルタのすべてが詰まっているだろう。


 そして俺を笑顔で迎え入れてくれたのは、カルタの母親だった。

 温和そうなカルタと違って、どちらかというと美人なタイプだ。

 目鼻立ちがしっかりとしていて、背も高い。

 

 なるほど、たゆんは母親譲りか。


「こちらこそ、カルタさんにはお世話になっております」

「――あら、カルタ。本当にいい男の子じゃない」

「お母さんってばあ!? ご、ごめんねヴァイスくん!? と、とりあえずお茶用意するね!?」


 そういって、カルタは杖もなしにふわりと浮く。

 二階まで飛ぶと、とてんっとこけた後、とたとたと消えていった。


「ふふふ、相変わらずドジっ子ねえ」

「そうでもないですよ。ここぞってときの彼女は頼りになります」

「だといいんだけどね。――ファンセント君、ちょっと来てくれるかしら」


 すると、カルタの母――エヴィリさんが言った。

 原作では出てこない人だ。

 温和そうに見えるが、どこかゾクリとした目をしている。


 はい、と返事を返し、連れて行かれた先は中庭だった。

 この規模の農業はノブレスでも類をみないだろう。


 メロメロンがひとつ、ふたつ、みっつ、いっぱいいっぱい。食べたい、ああ食べたいな、ヴァイを。


「あの子、あなたがメロメロン好きなのを知ってるから、帰るたびにいつも大きくて美味しいのを探してるのよ」

「……それは知りませんでした。すみません、いつも美味しいのを頂いてしまって」

「ふふふ、感謝したいのはこっちのほうだから」


 するとエヴィリさんはニコリと微笑んだ。

 どういうことかわからないが、続けて――。


「あの子が学園に受かったとき、私は夫と凄く喜んだ。でも、本当のあの子の気持ちに気づかなかった。本心がわかったのは、随分と後なのよ。でも、あなたの話をするようになってから凄く明るくなった。――ありがとう、ファンセントくん」

「……買い被りすぎですよ。俺は何もしてません。むしろ、いつも助けられています」


 心の底から出た本心だ。

 すべてのきっかけはカルタ、彼女がいなければ今の俺はいないと断言できる。


 しかしエヴィリさんは、温和そうな顔から一転、鋭い目で俺を見つめた。


「でも……危険な目にも合っていることも知っている。それにあなたが関係していることも。感謝していると同時に、不安も感じているのよ。あなたの噂を気にしてるわけじゃない。あの子は不器用で、なりふり構わない性格をしているわ。それが、たまらなく心配なのよ」

「……申し訳ありません」

「ふふふ、ごめんね意地悪しちゃったわ。でも、本当にあなたの事が好きみたい。どう思ってるのかはわからないけれど、あの子はいい子よ」

「重々承知しています。俺も、彼女のことを信頼しているので」

「ふうん。あら、思ってたよりも勝算があるのね」


「お母さん!? な、なにしてるの!? 何で二人きりで話してるの!?」

「あなたの事が好きなのかどうか聞いてたのよ。良かったわね、カルタ。少しは可能性あるみたいよ」

「えええ、な、な、な、な、なにを言ってる!?」


 まったく、似た者同士の親子は大勢いるが、ここまで正反対もめずらしい。

 とはいえ本当に良い母親のようだ。

 カルタの事をよく見てる。


 俺がエヴィリさんの立場なら心配でたまらないだろう。

 魔族と何度も交戦し、あまつさえ牢屋にまで閉じ込められたんだ。

 それでも信じている。それでも応援してる。


 父のことでも身に染みたが、親の愛情ってのはかけがえないものだ。


 ……ああ、早く全てを終わらせてゆっくりしたいな。


「カルタ、焦りは禁物よ」

「だ、だからなにを言って――」

「カルタ、メロメロンが作られているところがみたいな。良かったら案内してくれないか」

「え? う、うん! もちろんだよ! えへへ」


 ―――――――――――――――――――――――


【カクヨムコン9新作】


 新作投稿しました。

 今回、ものすごく作品数が多く、すぐに埋もれてしまいます( ;∀;)

 内容として面白いと思うので、是非フォロー&☆をもらえないでしょうか?

 読者様、私に是非お力をお貸しください!


最強で最凶の悪役に転生した俺は、原作主人公の為に暗躍す

https://kakuyomu.jp/works/16817330668130826322

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