140 予想外

 俺の予想は当たっていた。


 だが予想以上だった。


 大きすぎる転移魔法によって、国全体が覆いつくされていた。


 ……なんだあれは。


 想像以上の巨大さに身体が固まる。


 今すぐここから逃げればいい。だが俺は目が離せなかった。なぜなら、転移魔法からとんでもない魔力を感じるからだ。


 その質は、カルタの魔力砲に似ていた。


 次の瞬間、空はまるで昼間のように輝く。


 転移魔法は、巨大な魔力の出射する為の装置なのだとわかった。


 街を覆うほどの大きさだ。


 魔力抵抗がある強者が生き延びても、平民は全員死ぬ。


 ――こんなことが。


「な、なによあれ……」


 俺は、急いで姫に近寄って抱き寄せた。

 念の為、身体を防御シールドで覆う。


 国全体をカバーするのは、俺の魔法では不可能だ。

 いや、よしんばできたとしても、俺の術式で防げるほどでもないだろう。


 そして案の定、空から魔力砲が姿を見せた。

 ゆっくりと、それでいて絶望感を与えるかのように。


 次の瞬間、巨大すぎる魔力砲が、街に向かって放たれた――。


 

 が。

 

 ――ズドキュァァァツアアアン。


 驚くべきことに、結界によってそのすべてが弾かれる。

 急いで閃光タイムラプスで視てみたが、綺麗な編み目模様の防御術式で隙間が一切ない。

 それどころか、美しくすらある。


 魔力砲をいとも簡単に防ぎ、四方にはじき返しながらも術式破壊を組み込んでいるのか、二次災害すら考えられている。


 ありえない攻撃に対してそれを上回るほどの防御、いや最上級の結界というべきか。


 こんなことができるのは、世界でたった一人・・しかない。


 ――ノブレス教員、白衣の守護天使――ココだ。


 俺は急いで姫を担いで、少しだけ街に近づいた。

 セシルの声を聞く為だ。


 突然、脳内に声が入る。


『二度目の厄災がくるわ。みんな、作戦は続行しつつ、敵に備えて』


 そして俺は、急いでセシルに脳内アナウンスを飛ばした。どういうことなのか尋ねたのだ。

 今回の作戦は一歩間違えれば大罪だ。必要最低限、信頼できる奴らにしか伝えていない。


 だがセシルは驚いたことを言った。


『アレンくんよ。ファンセントくんの作戦を聞いて、最悪の想定した場合、手助けがいると判断した。そして、心から信用できる人に伝えたみたい。もし作戦が失敗した場合、貴族のみんなと違って自分は平民、全ての罪を一人で背負うとまで言い切ったわ』

『なんだと、あの主人公バカ野郎、だが――最高だな』


 そんな俺の喜びの束の間、間髪入れず、空に転移魔法の穴がいくつも開いた。

 大会時よりも多い。圧倒的な数だ。


 作戦は成功した。だが最悪はこれからだ。


 俺は命がけで姫を守る。それは変わらない。

 しかし次々と現れた魔物は、物語の終盤で出てくる最上級の魔物だらけだった。

 決して個体自体は大きくないが、一体一体が鬼のように強いに強い。

 

 かつてのミハエル以上もあるだろう。


 気持ちが揺らぐ。助けに行かないと大勢が死ぬ。だが俺の最優先はソフィアを守ることだ。


「街が、みんながっ!」

「ダメだ」


『――大丈夫』


 しかし俺を安心させてくれた言葉はセシルだった。

 その意味がわかった瞬間、俺は危機的状況にも関わらず笑みを零す。


 空に向かって駆けあがったのは、最強の二人、エヴァ・エイブリーとミルク・アビタスだった。

 

 はっ、アレンのやつ、どうやって説得したんだ。てか、俺にも内緒にしやがって。


 けど、これ以上に頼りになる二人はいない。


 安心した後、地上に降り立つ。

 このまま国から離れてもいいが、予想が的中した以上、個別で狙われる可能性がある。

 ならば、まずは作戦通り、合流を優先したほうがいい。


 そう思った矢先、俺たちの上空に転移の窓が出現した。


 おそらくだが、ソフィアの魔力に反応しているのだろう。


 そこから、異形な魔物が次々と現れる。

 蜥蜴だったり、アンデットモンスターだったり、様々だ。


 しかし俺はの腹は決まっていた。


「ソフィア、俺から決して離れないでくれ。――必ず守る」


 なぜなら、もう心配することはないからだ。


 見えなくとも、頼りになる奴らがいる。


 俺は俺の任務を遂行すればいい。


 ――癒しの加護と破壊の衝動。


魔物ざこどもが、数だけで俺に勝てると思うなよ」


 ──────────────────


 さあきた厄災! 少し短いですが、内容は濃かったのではないでしょうか!

 明日も更新、明後日も更新、三連休も休まず投稿します! こうご期待(^^)/


 更に『ブクマ3万記念SS ヴァイスとシエラでお買い物』 3445文字を、サポーター様限定で投稿しました。

 まだ数は少ないですが、第一章、『もしヴァイスが投げたコインが裏だったら?』のifも投稿していますので、そちらも良ければ!


 異世界ファンタジーの新作、五話目を投稿しています!


 タイトル

『魔力ゼロで落ちこぼれだと言われて追放された俺、実は呪力SSSの呪詛師だったらしいので、地位も名誉もすべて自力で取り返します』


https://kakuyomu.jp/works/16817330666071591448


 結構面白いと思うので、良ければ見てほしいです!


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