182 地下のサイドストーリー②

「――あそこに座るぞ」

「畏まりました」


 中に入ってからのベルクは、予想以上にしっかりしてた。

 変な受け答えは一切せず、執事の模倣として完璧にこなしている。


 元々器用な奴だ。その最たる理由は、やはり目だろう。


 たまに俺とアレンのような動きをする。

 他人に興味がなさそうだが、生来は誰よりも人が好きに違いない。


 ま、本人は気づいてないだろうが。


 大きなソファに腰掛けると、スタイルのいい女が飲み物を持ってくる。

 ベルクはそれをひょいと取ると、俺に手渡してきた。


 そのまま飲もうとするが、それは仕草だけだ。


 ったく、よくわかってんじゃねえか。


 事前に伝えている通り、周囲をしっかりと観察している。

 その中で驚いたことがあったらしく、少しだけ身体の挙動が変わった。


 わかりやすい奴だ。


 ここにアレンがいれば、もはやその程度じゃすまないだろうが。


 そのからも人が増えていく。


 そしてついに――始まった。


 おあつらえむきのカーテンが、勢いよく開かれる。

 何も言わずに現れたのは、鉄格子の中に入った――子供たちだった。



 

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