332 バトル・ユニバース ( セシルside )

「すみませんが、セシル。あなたに時間はかけません。――それでは」


 クロエ先生が、問答無用で距離を詰め、攻撃を放ってきた。

 防御シールドでは防げない、音速を超える速度と駆け合わさった魔力の通った鞭。


 一撃で落とされる――以前の私ならば。


「――これは……バトル・ユニバース!?」


 魔法障壁が私を覆い、鞭が弾かれる。

 いつもは見せないクロエ先生の驚きの表情。

 

 地面から白い光のエフェクトが響くと共に、魔法駒が出現した。

 大きな杖を持った魔法使い、馬に乗った老騎士、盾を構えた屈強な兵士。


 私だけの武器。私にしかない魔法。誰にも負けない――力。


「説明は不要ですよね」


 私とクロエ先生は、何度もユニバースで戦っている。

 けれども、一度も負けたことはない。


 これは、私が編み出したまったく新しい魔法。


 クロエ先生は鞭を地面に垂らすと、いつもは見せない穏やかな表情を見せた。


 ――ああ、やっぱり先生は凄い。


 わかったんだ。


 自分の攻撃のターンが、終わったんだと。


「次は、私の番です」


 心を落ち着かせて、心の中で指示を出した。

 大きな杖を持った魔法使いが、生前で一番得意だった魔力砲を放つ。

 すると、クロエ先生の盤面の一体が砕け散った。


 ――バトル・ユニバース不平等な真剣勝負


 地面に術式を描き、あえて先手を相手に与えることで能力が発動する。

 私が敵と認識した相手が王となり、魔力に応じて攻撃範囲と守備範囲が自動で設定され、対象は駒の一つとなる。


 ただし能力は、バトル・ユニバースのルールに収まる範囲で。

 他の駒のは能力は同じだ。


 クロエ先生は、自身の固有能力をバトル・ユニバースの駒として使うことができる。

 魔力から感じ取れる攻撃範囲は四マスで、ライフは三。つまり、三回の攻撃を受ければゼロ。

 騎士と魔法使いを合わせた王に近いだろう。


 たいして私のライフは二だったが、今の先制攻撃を受けて、残りは一。

 次に攻撃を受けると敗北だ。


 けれども、負ける気がしない。


 

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