248 魔力増強の湯

 ニールたちの対決が終わり、いつもの日々を過ごしていたが、新しい問題解決のために学園が一時的に休学になった。


 それは、プリシラが訓練服の魔術を意図的に切ったからだ。

 学園側はそれを問題視し、彼女を咎める事はなかったが、今後あってはならないとして改良することにしたらしい。


 よって、それぞれの時間を過ごす事になった。

 以前のような魔族キンブリー襲撃事件に注意をしなきゃいけないが、常に気を張ってるわけにはいかない。


 そして俺には果たすべき約束がある。


 それは――。


「ヴァイス、楽しみですわ」

「温泉なんて初めてです! みんなで入れるなんて、最高ですね!」

「ああ、とはいえいつ危険が訪れるかもわからない。二人とも、警戒は怠るなよ」


 二人に俺のすべてを話すことだ。

 

 奴隷紋のことや法律関係で少し遅くなってしまったが、今後の信頼にも関わる。

 何よりもかけがえのない二人にも失礼だと気づいた。

 今ここにいることが、奇跡なのだから。


「シンティアさん、あそこにでっかい鳥いますよ!」

「あら、凄い大きいですわね」


 今は船の上、ちょっとした旅行も兼ねている。

 二人のリラックスした姿を見るのも久しぶりだ。


「お、おいあれ魔物じゃねえか!?」

「な、何だあのバカでかい鳥は!?」

「ひ、ひいい、だ、だれか冒険者はいないのか!?」


 そして強欲な俺は、もう一つの夢を叶えようとしている。

 それは、ノブレスの伝説的なサブエピソード、魔力増強の湯とされている温泉に入浴することだ。


 大まかな場所は分かっているが、誰も見つけることができなかった幻の湯。

 ひとたび浴びれば最強の力を得られると言われていた。


 それが本当なのかどうか、俺が見つけてやる。


 もしかするとこれこそが完全制覇に必要なのかもしれない。


 ヴァイス・ファンセントバージョン3ぐらいになって凱旋するのもおもしろいだろう。


「シンティアさん、鳥が近づいてきてますよ! 餌がほしいんですかね?」

「何も持ってないわ。何かおやつでもあればよかったんだけれども」


 確かに二人の言う通り、鳥が近づいてきている。


「み、みんな逃げろおおおおおおお」

「死ぬぞ、死ぬぞおおお」

「うわあああああああ」


 ここ最近はずっと忙しかったからな。

 楽しみだ。


 さて――。


「おやつに鳥の串焼きでも食べるか? シンティア、リリス」

「好きです! 鳥大好きです!」

「私はミディアムがいいですわ」


 バカでかい鳥が鋭い牙を向けてくる。

 爪はギラギラと魔力で漲っていた。


「ギギァギャガース!」

「焼き鳥もいいな」


 一撃で首を落とす。すると、そのまま海へ落ちていく。

 あ、やっちまった。


「ま、いいか。――中で飯を食おう」

「そうですね。ほらヴァイス、お身体が冷えていますよ」

「悪いなシンティア」

「いっぱい食べましょー!」


 その場を後にしようとすると、なぜか大勢の旅行者が俺たちを見ていた。

 何があったのか?


 わからねえな。


「あ、あいつら何者なんだ……」

「A級魔物のグロストバードを一撃だぞ……」

「……とんでもねえ怪物たちだ」


 ――――――――――――――――

 あとがき。

 三人で移動はもしかしたら第二章のタッカー編以来かもしれません。

 よくよく考えるとweb小説ではありえない気がしてきました。


 この作品、キャラ多すぎないか……?


 ということで、強者の湯を見つけることはできるのか。

 はたまた何か問題が起きてしまうのか、お楽しみに(^^)/



 レーベル:角川スニーカー文庫 様。

 担当イラストレーター:桑島 黎音 様

 

 【Amazonリンク&イラスト付き】

 https://twitter.com/Kikuchikaisei/status/1755186344601804896


 【近況ノート&イラスト付き】

 https://kakuyomu.jp/users/Sanadakaisei/news/16818023213152743067


 よろしくお願いします☺

 



 

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