184 オークション②
奴隷自体はこの世界で違法じゃない。
戦争孤児でのたれ死ぬよりはいいと、自らを差し出すやつもいる。
ただ、ここにいる連中は違う。
違法に誘拐、鹵獲された子供たちだ。
言い方は悪いが、亜人は希少なのだ。
それが、この世界においては最悪な結果となるときもある。
「さあ、いませんか!? ほかには!?」
釣り揚がった値に喜ぶ司会者の声。
原作でアレンはこの事を知って全てをぶち壊す。
だがここにいるのは盗賊団みたいな底辺な奴らじゃない。
名のある貴族、有力者たちだ。
その後は大変だ。正義のためにも関わらず追われ、王都に出入りができなくなる。
そんなエピソードもゲームでは人気の一つだった。
主人公が辛くなればなるほど、ゲームはおもしろくなるからだ。
俺がこの場所に来た理由は正義執行の為じゃない。
胸糞の悪いエピソードを破壊する為だ。
もちろんヴァイスとして入場した後は姿を隠し、裏で暗躍するつもりだったが。
「……これ、なんすか」
「見たままだ。お前は、知らなかっただろう」
「……許せねえっす」
「ああ。で、どうしたい?」
頭がいいこいつならここで暴れることがどれだけ危険なのかわかっているはずだ。
だからこそ、動けない。
心と体が拒否反応を起こしているはずだ。
アレンのようなバカじゃないからな。
「……どうすれば」
「自分で考えろ」
オークションは順調に進む。
その場ですぐ受け渡しというわけではなく、全てが終わって届けられるのだ。
それも全て安全の為。
ベルクはただ眺めていた。
絶望なのか、理性のおかげなのかはわからない。
……ま、仕方ないか。
俺は静かに立ち上がる。
ヴァイス・ファンセントとして入場したが、俺自身のアリバイは別で作っている。
ここで暴れても問題はない。
だがそのとき――ベルクが前に出た。
お前の覚悟を、未来を、原作を変えることできるのか、教えてくれ。
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