185 許せねえ①

「――許せねえ」


 そのままベルクは、少女の鉄格子の魔法を解除した。

 だがそれ自体は俺も驚いた。


 なぜなら檻は、強固な魔法結界が施されていた身体。

 閃光タイムラプスがなければ解除できないほどの強固な結界。


 それを直感で解除しやがった。


 ったく、天才ほんものめ。


 そのまま子供たちを助け出すのかと思いきや、何を想ったのか、仮面をはぎ取った。


「こんなの許せねぇ。てめえら、何考えてやがる!」


 はっ、バカは後先を考えないが、本当のバカは後先を考えた上で行動するってか。


「こいつ。――ベルク・フリーデじゃないか」

「どうして王家のものが……マズいぞ」

「……殺せ! 早く八つ裂きにしろ!」


 興奮したカスどもが騒ぎ立てる。

 フリーデ家はさすがにおそろしいのだろう。もちろんこの売買は違法だ。

 奴隷が、というわけではなく、厳密には税金を払わない行為と、細かい条例の問題だがな。


「お前ら、何してる!」

「そうだ。早くしろ、ここにいる全員が失脚してもいいのか!」


 すると護衛と思われる奴らが前に出た。

 それぞれ剣を持っている。一方でベルクは丸腰だ。

 厳重な身体検査は、この時を想定している。


「――ベルク、大変なことになるぞ」


 俺は、その場で声を掛けた。

 だが奴は、許せねえと声を大にした。


 俺は、それに笑みをこぼす。


 あァ、少しは変わってきてんだなァ俺の心も。


 次の瞬間、男たちがベルクに切りかかる。

 貴族の護衛、更に運営側の護衛だ。それなりに強いだろう。


「――先輩……」

「ま、連れて来たのは俺だしな」


 俺は前に出て、ベルクを守った。魔法剣デュアルソードは既に出現させている。

 そのままデビを召喚させると、隠し持っていた木刀を手渡した。


「こいつらは殺すな。心情的には構わんが、後々が面倒だからな」

「……うっす」

「さて、お前だけにリスクを背負わせるのは、さすがに卑怯か」


 俺はその場で仮面をはぎ取る。

 もちろんわかっていたと思うが、これで確定したはずだ。


 こいつだけに責任を負わせるのは、先輩としてはありえないだろう。


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