355 やっぱりダメ

 確かにデビの時は撫でてやっていた。オリンが使役してからも理性があるし、ちゃんと可愛がったほうがいいと言われたからだ。

 とはいえ、今のマリスはなんというか、その……女すぎる。


 この言葉が適切かどうかわからないが、白い肌が見えすぎだ。

 デビを連れているときは何も言われなかったが、マリスを連れて校内を歩いていると、ヒソヒソ話が凄い。


 やれ女を飼いはじめたやら、やれセクシー女性が好きだったとか。


「主様……」


 ったく、うるうるした目で俺を見やがって……。


「……お前はよくやった」


 撫でてやると、マリスは嬉しさのあまり尻尾をぴょんぴょんしながら悶えやがる。


「何という幸せ……マリスは主様を愛してますっ!!!」

「そうか……――」

「なるほど、私の見えないところでこんなお楽しみプレイをしていたのですか――ヴァイス」


 驚きのあまり振り返ると、そこに立っていたのは冷気漂うシンティア・ビオレッタだ。

 隣にはリリスが立っていて、いつものようにニコニコしている。


「ヴァイス様、おはようございます! マリスさんもおはようございます!」


 なんて言い訳したらいいのか脳をフル回転させていたら、マリスが今度はシンティアに抱き着いた。


「シンティア様っ!」


 身長は高いが、膝をついてシンティアのたゆんにすりすりしている。

 リリスは微笑んでいる。シンティアは、少しだけ戸惑っていた。


 デビは元々彼女に懐いていた。それは、変わっていない。


 そして、少しだけ心に抗うように撫でる。


「……マリスさん、あまりヴァイスに触れたらダメですよ」

「はいっ!」


 よくやったマリス。さすが俺の使役だ。


「でもヴァイス、それとこれは別ですから」

「はい」


 やっぱりダメでした。

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