180 ヴァイスとベルク②
だがそれは当たり前だ。俺やアレンは、原作を超えた動きで戦っている。
普通にやっていては勝てるわけがない。
だからこそあいつは、自分の型を破っている。
原作でのベルクは基本に忠実で我流を嫌う。
それは無駄だとわかっていたからだ。
唯一敵わなかったメリルは生粋の魔法使いだ。戦士との闘いと違って、ジャンケンのような魔法対決に勝敗は意味を持たない。
シンティアがまともに戦えばカルタに勝つのが難しいように、状況が勝敗に直結するからだ。
にもかかわらず、奴は俺とアレンの試合を見ただけで今までの自分を捨てる決意をした。
俺がミルク先生から教わった剣をすてるようなものだ。
たとえこのままでは勝てないと頭でわかっていても普通はできない。
更にそれに対して驕ることもなければ、むやみやたらに人に話すこともない。
時間さえあれば型の練習をし、その更に上回る時間でそれを破る練習をする。
後輩とは名ばかり、俺は
剣士としての本当の意味を。
こういったところはデュークと同じだ。高みの為にただひたすらに前にすすむことができる。
――ったく、
「――おい」
「違うなぁ……。ん、なんかヴァイス先輩の幻聴が? 気のせいか」
「おい、ワクワク小僧」
「え? えええふぇえええ!? ど、どうしたんすか!? こんな夜中に!?」
「こんな夜中だからだ。ベルク、まだ動けるか?」
俺は、決して平等なんて求めていないし、これからも必要ないと思っている。
それに、人を信じることもあまりない。
だが――ま、少しはそれもありかもしれない。
こいつなら、なんとかしてくれるかもしれない。
ベルクは急いで服を着替える。
「夜食っすか!? もしかして夜中に頑張ってるからってご褒美っすか!?」
「違う。少しいくところがある。だがお前は後悔するだろう。その図太い神経でも耐えられるかどうかは知らん」
俺の物言いに、ベルクは笑みを浮かべようとした。
行きますと、返事するんだろう。
だが、制止する。
「今日はこれから一切の笑みをこぼすな。それが条件だ」
「……うっす。――ついていきます」
「ああ。光のお前に、闇を教えてやる」
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