308 新しい訓練場所

「いよいよですね、ヴァイス」

「ヴァイス様、私は何でもします。是非、駒のようにお使いくださいませ」

「シンティアはいいが、リリスお前は気負いすぎだ。勝つ為には生き延びることも考えろ」

「わ、わかりました! お優しいヴァイス様! 一生懸命に頑張ります!」


 いつものガッツポーズが見られたのは嬉しいが、正直、死ぬ気でやらなきゃ勝てないだろう。


 今俺たちは、新しい訓練場所に来ていた。

 以前、ニールと戦った国の近くの荒野だ。


 砂埃が激しく、山のようなむき出しの岩が等間隔に聳えている。

 今までの一番の敷地面積らしく、端から端までは全力で走っても30分はかかるらしい。


 下級生、中級生の面子は既に訓練服に着替えている。

 後輩たちで勝とうとしているのはベルクとメリル、その他数人ぐらいだ。


 無理もないだろう。俺たちにすら敵わないのだから。


 事前の作戦の話し合いか、クロエ、ダリウス、ココ、ミルクも一堂に会していた。

 四人並んで話している姿は、原作ではありえない光景だ。

 

 その姿に、思わず頬が緩む。


 彼、彼女たちはノブレス・オブリージュの偉人みたいなものだ。

 全員が達人で、天才で、最強だ。


 その凄さを一番知っているのは、俺だろうが。


「めずらしいね。ヴァイスでもそんな顔するんだ」

「あ?」

「でもわかるよ。僕だって楽しみだ。ダリウス先生やミルク先生、ココ先生にクロエ先生、でも、勝たなきゃいけない」


 アレンがめずらしく気合十分だった。

 でも、どこか力が抜けている。


 ミルク先生にもっと楽しめと言われたらしい。

 はっ、こいつにそんな事ができるとはな。


 だが――。


「お前と一緒にするな。勝つ為に仕方なく同じ陣営にいるだけだ。何度か手を借りたからといって、調子に乗るなよ」

「……なんでそんな言い方をするんだよ」

「文句あるのか?」

「言わせてもらうけど、僕だって――」

「はーいはいはいはいはーい、終了でーーす。試験前に余計な面倒起こさないでね」


 俺とアレンの間に割って入ってきたのは、ピンク髪の女、シャリーだ。

 そこにデュークも現れる。相変わらずガタイがいい。


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