201 ソフィアの頼み③

 ソフィアが住む国には、当然だが統治している土地がある。

 だがそのすべてを守るのは難しい。


 更にそれが、直接的な被害がない場合は当然だ。


 ここから東の端、カルロという村の近くで竜が居座っているらしい。

 薬草獲り、畑仕事、その他の狩りもできないとか。


 ただそれだけで兵士を派遣するのは難しい。


 ただでさえ貴族に不利な政策を行っている途中だ。

 彼女を意欲的にしたのは俺だ。

 その責任の一端は俺にもある。


 表向きは冒険者の依頼として料金も弾むとのことだが――。


「必要ない。金には困ってないからな。適当に村にでも渡しておいてくれ」

「ボクも必要ありません」

「私もだ。特に使うこともないからな」

「私は元々ヴァイス様についてきただけなので、必要ありません。もちろん皆様と同じお気持ちです」


 必要ないと言い切った。

 オリンたちもそうらしい。というか、俺がこの場で言う必要はなかったか。

 けどま、こいつらなら同じ言葉を言っていただろうが。


「村まではビアトが案内します。それじゃあ、皆さんお願いします」


 最後に、ソフィアが俺たちに頭を下げた。

 ったく、さっきと言っていることが違うだろうが。


「友人なんだろ。いちいち頭を下げるな。それより騎士が付いてきていいのか?」

「……ありがとうヴァイス。彼は傭兵だから大丈夫なの。それじゃあビアドお願いね」

「任されました。大型の馬車を用意しています。できるだけ席が良いものを選びましたが、あまり派手にはできませんので少し不便かもしれません」

「気にするなビアド殿! 我らはおしりも鍛えているぞ!」


 ノブレスでそんな授業はなかったが、あえて突っ込むのはやめておくか。

 にしてもやはりトゥーラの心臓は少し分けてほしいところだ。


 だが不安なことが一つある。


 今回のエピソードを聞いたことがないことだ。

 ノブレスでサブエピソードはめずらしくもないが、竜は存在が大きい。


 それでも知らないというのが、気になるところだ。


 何か不安なことがないといいが。


 ったく、いつも確定した未来を知っている弊害だ。


 これが普通な感性なのだ。


 何もかも知っていることが当たり前になっている。


 物語の進行速度が速く、更に分岐していることから、これからもっと知らないことが増えてくるはずだ。


 すべてに対応していく。


 それが、制覇クリアする為に必要だ。


「リリス、先に伝えておくが自分の命は大事にしろ。お前は人を守る為に自分を犠牲にしすぎだ。これはファンセント家としての命令・・だからな」

「……ふふふ、できるだけ・・・・・頑張ります」

「怪しいな……」

「私は、ヴァイス様のメイドですから」

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