335 バトル・ユニバース ④( セシルside )

互先たがいせんでいい。その代わり、俺が勝ったら一つ言う事を聞いてくれ』

『……それ本当に言ってる?』

『ああ、世界優勝者チャンピオンのセシルに言ってる』

『ふふふ、面白いわね。でも、私が勝ったら何のメリットがあるの?』

『それはそっちで考えてくれ』

『ふうん、いい条件ね。だったら、そうさせてもらうわ』


 私とファンセントくんは、バトル・ユニバースで賭け事をした。

 あのときは私が勝った。厄災のことや、気持ちを教えてもらって、力を貸すことになった。


 きっとそのときの事が関係している。

 過去が未来を作る。ファンセントくんの言う通りだ。


 見てほしい。私の、姿を――。


「セシル、それは――」

「クロエ先生、私は弱いです。でも、負けたくないし、負けられない。その為にはどうすればいいのか、これが答えです」


 構築術式が駆け合わさって、私の手に魔力が具現化していく。

 すると、二本の鞭が現れた。


 私の仕事は、安全な場所で、みんなを勝利に導くこと。

 だったら、大きすぎる力はいらない。


 目の前の人を、ちょっとだけ超えられたらいい。


「――どの程度の力か、教えてもらいますよ」


 そしてクロエ先生は、まっすぐに駆けてきた。


 ――――

 ――

 ―


「――ファンセントくん。私は強くなったよ」


 そして私は、鞭を何度も放って防御を破壊し、祠を壊した。


 魔法鳥が、叫ぶ。


『クロエ・ロレッツの祠が、セシル・アントワープにより破壊されました。強制転移します』


 次の瞬間、眩暈がして、その場で倒れる。

 魔力は残っているけれど、精神的な負担が想像以上に大きい。


 でも、私はやり遂げた。


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