334 バトル・ユニバース ③( セシルside )

「セシル、これは凄い魔法です。きっと、魔族を見て思いついたのでしょう」

「……その通りです」


 以前、私はキンブリーという魔族に殺されかけた。

 影を踏まれて発動する前提条件の原理を調べつくし、人類の魔法を掛け合わせて作り上げたのだ。

 

 私にしかない、私しか扱えない魔法を。


「これだけの魔法、先手をあげるのが発動条件としてもあり得ません。一体、他に何を……」

「この試合は、クロエ先生が敗北を認めるまで続きます。しかし、私には一度しか猶予がありません」


 相手を傷つけず無効化したいだなんて、私の偉そうな願望だ。

 さらにゲームを楽しみたいという欲求が編み出した、誓約。

 

「それだけではないでしょう?」


 ああ凄い、さすが、先生だ。


「私は一度でも負ければ――死にます」


 これは覚悟だ。


 私はバトル・ユニバースがあったから生きている。

 

 だから、絶対に負けないし、これからも勝ち続ける。


 クロエ先生は強い。

 油断はできない――。


「降参です。私の負けで、これ以上戦う気はありません」


 次の瞬間、完全に敗北を撒けたことで、能力が強制解除された。


 よって、クロエ先生は、24時間、魔力が使えなくなる。


「なぜ、諦めたのですか……私の命が惜しいと!?」

「いえ。私はいつも勝つために行動しています。なので、負ける戦いはしません。セシル、私はあなたが誰よりも賢いと知っています。その唯一の弱点を強い覚悟でなくしたのです。勝てるわけがありません」


 ……ふふふ、嬉しいな。


「ですが、たった一つ誤算あります。いくら魔力がなくても、私は弱くありませんよ」


 すると、魔力を通っていない鞭をぶんぶんと振り続ける。


 魔力がある人間とない人間で戦うのは、子供と大人以上、いや、子供と魔物以上の力関係がある。

 ただ、それでもクロエ先生は諦めないと。


 ――ああ、やっぱり先生たちは凄い。


 でも、私も手加減はしない。


 この魔法には、勝者の褒美・・が存在する。


 それは――。



 

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