323 認めてくれたのか

 血が滾る。

 おそらく俺は、今までで一番強いだろう。


 «ダリウスが真正面から振り下ろしてくる»

 «クロエの鞭が右斜め上と左下»

 «ミルク先生が後ろから»

 «ココがダリウスを防御する»


 ダリウスの攻撃、クロエの鞭、ミルク先生の剣捌き、ココの防御術式が視える。


 癒しの加護と破壊の衝動の術式は、前よりも複雑にしていた。

 でなければココが瞬時に破壊していただろう。


 今はパスワードのようなものを設置している。

 魔法はイメージの世界。それを、ルナからふたたび教えてもらった。


 俺には時間が足りない。強者どもの圧倒的な経験を超える為には、魔眼だけでは足りなかった。


 未来が視えるだけでは、辿り着けない領域があると確信していたのだ。


 教員も気づいてないだろうが、マリスはただの戦闘要員じゃない。


 彼女とは、すべての感覚を共有している。


 「視覚」 「聴覚」 「嗅覚」 「触覚」 「味覚」


 加えて本来、過度な魔法を奪ったことではじけ飛ぶであろう魔力を彼女に流す。

 おもしろいのは、それを交互に行っているのだ。


 まるで電流のように、マリスから俺に、俺からマリスに。それにより、限界を超えた力をギリギリのところで出せる。


 新しく技を編み出すのではなく、今までのすべてを昇華させる。

 

 そして唯一の弱点、それを無くすこと。


 それこそが、ルナとの訓練の一番の目的だった。


 ああ、感謝してもしきれねぇ。


 最強たちと渡り合えることが、こんなにも楽しいとは思わなかった。


 ノブレス・オブリージュで憧れた本当の強者。


 彼らと今俺は、対等に渡り合っている。


 ――見ているか、ヴァイス。


 俺は、強くなっただろう。


 けどこれからだ。


 ここからが――。


「ヴァイス、お前には驚かされてばかりだ」


 そのとき、ミルク先生は炎と水を纏っていた。

 これは最終奥義。


 魔族侵攻の際にも使っていた技だ。


 原作では攻撃すらも通さない、圧倒的な攻守一体の魔法として最強を誇っていた。


 訓練では一度も見せてくれなかった。


 そうか、俺を――認めてくれたのか。


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