305 ボーイミーツボーイ

 作中でクロエの事は知っているが、セシルと同じで頭脳タイプだ。

 2本の鞭に魔力を通わせ操り、攻防一体で戦う。


 シンプルがゆえに強く、原作でも魔物が触れようとするだけでこまぎりになっていた。


 以前の厄災でもクロエの鞭は猛威を振るっていたし、何よりも卓越した魔法が厄介だろう。


 移動魔法を試験中に使って来るのかどうかはわからないが、厄介なことは間違いない。


 冷徹で非情、学園でのルールにも厳守しており、頑固で融通がきかないタイプ――だった。


 なのにクロエはセシルを鍛えたりしていた。

 俺の知っている彼女とは別人だと思ったほうがいい。それだけ荷厄介だろうが。


「ボク、クロエ先生とよく話すよ」


 するとそのとき、隣から声がした。

 いつの間にいたのかわからないが、美味しそうにオムライスを頬張り、ケチャップをつけていたのは、容姿端麗の美少女――いや、オリンだった。

 相変わらず女みたいな顔と声だ。

 知らない奴は完全に女性だと思っているらしく、告白されてから性別を伝えることを何度も繰り返しているらしい。

 だが女子生徒からの人気もある。


 外見もそうだが、人懐っこいところと面倒見がいいからだろう。


 てか――。


「一体何を話すんだ?」

「んー、ボク本が好きなんだけど、新作の話とか」

「……お前、本とか読むのか?」

「うん! よく図書館にいるよ!」


 そういえば噂で、図書館に謎の美少女がいると話題になっていた。

 今オリンは髪の毛が伸びている。それこそ、ロングすぎるほどに。


 なぜ切らないのか訪ねてみたが、なんとなく、と言われてしまった。

 いつも真面目なこいつが? と思ったが、おそらくノブレスの開発陣がうまく怠惰を組み込んだのだろう。


 流石、プレイヤーのツボを押さえて――いや、何でもない。


「で、何かわかったことはあるのか?」

「クロエ先生は凄く頭がいいよ!」

「ほかには?」

「丁寧な喋り方する!」

「後は?」

「意外と恋愛物語が好きみたい」


 原作にもなかった未公開のプロフィールだけ少し眉が動いてしまったが、戦闘に必要ない。

 オリンもやっぱりアレン一族か。


「何の意味が――」

「凄く思慮深いんだけど、それを逆手に取れるかも」

「……どういう意味だ?」

「裏の裏まで考えてるみたいなんだよね。だから、完全に読み切ってしまえば、逆に優位に立てるんじゃないかなと思って」


 ……いや、オリンは違うか。

 こいつは、意外と考えている。


 頭のいい奴らは、ほとんどが真正面からは来ない。

 

 ニールとプリシラが、真っ先にセシルを落としにかかったかのように。


 あのときも俺たちが彼女が狙われるとわかっていたら、もっとやりようはあった。

 それこそシャリーが罠を仕掛けていれば簡単にケリがついたのかもしれない。


 しかしクロエならそれすらも読む。


 だからこその裏の裏か。


 それには俺の知識とオリンの考察力、セシルの頭脳が必須だろう。


 褒めてやろうオリン、猪突猛進ガールではなく、頭脳ガールに昇格だ。


 いや、ボーイか……。


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