306 謎の美少女先輩


「クロエ先生と戦ったりしたのか?」

「ちょっとだけ」

「……意外だな。もしかしてお前から声をかけたのか?」

「そうだよ。初めは断られたんだけど、何度もお願いしたらいいよって。でも、凄く強かった。鞭がこう、ガーンッて来たかと思えば、ヒュンヒュンって! 最後はバチチチチって!」


 するとオリンは、よくわからない擬音と身振り手振りで話し始めた。

 長い髪の毛が揺れて、頬のケチャップが目立つ。


 シンティアがやきもちを妬くことはない。

 なぜならオリンは男だ。


 しかし下級生は、それを見てひそひそと話していた。


「ヴァイス先輩、両手に花束抱えてないか?」

「すげえ、シンティア先輩とリリス先輩と、謎の美少女先輩まで」

「どこまで見たことあるような……でも、めちゃくちゃ綺麗だな」


 耳がいいのも考えものだ。

 無視したくてもできない。


「あ、ヴァイス君、ほっぺにメロメロンついてるよ」


 するとそのとき、俺の頬の果実をオリンが取った。

 もちろんパクっとはしないだろうが、こんな場面誰かに見られたら勘違いされてしまう。

 

 闇の力を全放出して、周囲を困惑させた。


「うわっ、な、なんだ今の殺気!?」

「え、えええ」

「ひ、ひゃあああ」


 これで何とか誤魔化せただろう。

 そう思っていたら――。


「ヴァイス先輩っ! その先輩誰っすか!? すげえ、可愛い人ですね!」

「ベルク、あんた……失礼すぎ。 すいません」


 そこにバカでかい声で現れたのは、ベルクとメリルだった。

 

 オリンはよくわかってないらしく、首を傾げていた。


「ふふふ、ありがとう?」

「……か、かわいいっ」


 するとベルクの眼がハートになる。

 次の試験では、下級生とも共闘する。

 特にこの二人は駒としても優秀だろう。


「ベルク、この先輩の為にも頑張れよ」

「ういっす!」

「ふぇ?」


 オリンの見た目も、為には役に立つな。


「うおお、誰だこのカワイイ人!?」


 その時、突然に現れたデュークも叫んでいたが、オリンだと気づいたのは、随分と後だった。


 ―――――――――――――――

【あとがき】

 次の話から試験が始まりますー!


『怠惰な悪辱貴族に転生した俺、シナリオをぶっ壊したら規格外の魔力で最凶になった』

 発売日:2024年3月29日(火)

 (紙本&電子共に予定)

 

 【Amazonリンク&イラスト付き】

 https://twitter.com/Kikuchikaisei/status/1755186344601804896


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