225 一局

「奴隷商人だけじゃなくて手広くやってるみたい。表では品行方正、裏では人身売買。界隈でニールと側近のプリシラを知らない人はいないわ。歯向かう敵には容赦なく、だけど味方には十分すぎる報酬を。おかげで随分と稼いでるらしいわよ」

「そのあたりは変わらずか……。――負けました」

「変わらず? 知ってたってこと? ――ありがとうございます。はい、次」

「そういうわけじゃないが、確信したって感じだな。 2-4」

「普通の何倍も税を納めているおかげで政界にも顔が利くみたいよ。公爵家でありながら胡坐もかかずに御立派だとも。2-5」

「ハッ、あのニールがご立派か。――セシル・・・お前はどう思う? 5-3」


 オストラバ王立記念公園。

 随分と懐かしい場所だ。

 セシルは、少しだけ悩みながら答える。


「……わからない。ファンセントくんは白か黒かはっきりさせたいみたいだけど、善悪は表裏一体。言葉で言い表せるものじゃない。いつものあなたならわかってるでしょう? でも、今回は違う。敵か味方か、判断を急いでるように見える。 5-4」

「……急いでる、か」


 セシルの言う通りだろう。

 ノブレス・オブリージュでの学園ボス、ニール・アルバートは強敵だ。

 何か事が起きてからでは遅い。

 だからこそ現状をしっかりと把握したいのだ。


 学園が休みの日にここまで来たのは、セシルと話す為だ。

 彼女に色々と調べてもらっていたのだが、今日は朝から家の事情で王都に来ていた。

 それで会いにきたのだ。


「アレンくんは奴隷制度に反対してるけど、私は難しい問題だと思う。貧困層の子供たちの生きる術を奪えば、残されたのは茨の道しかない。といっても奴隷紋には絶対賛成できない。一度刻印されると最後、二度と消せないなんて、さすがに身勝手がすぎる」


 セシルは感情をあまり表に出すことはない。

 ただそれでも怒りをあらわにしていた。

 

 さてどう動くべきか。

 原作通りならば奴はアレンと衝突、だがここからはエピソードが枝分かれする。

 そこをどう止めるべきか、静観すべきか。


 

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