219 常識
周囲の反応は、どちらかというとニール寄りだ。
当たり前だが、ここにいる連中は貴族で、奴隷なんて普通のこと。
シンティアですら奴隷制度自体に嫌悪感はそこまで抱いていないはず。
もちろん暴力的な行為は根絶すべきだが、それとこれとは別の話だ。
俺は以前、アレンと奴隷の歴史学で衝突した。
だがそれはこの世界、この時代の道徳に反った答えを言っただけだ。
皮肉にも心情的だけでいえば、俺はアレンの気持ちがわからなくもない。
人権を無視した行為、世が世なら根絶すべきだろう。
しかしそれはあくまでも個人の主観、プリシラ本人がどんな生き様で、なぜ今のような状態なのかはわからない。
そしてそれは俺も知らないのだ。
あいつは原作でも異質な存在で、多くを語られることはない。
「いい加減にしてくれ。君の勝手な主観で決めつけないでもらいたい」
ニールは余裕顔で吐き捨てるように言った。
その後、あえてプリシラの首に触れる。
奴隷紋は一見洒落た模様だが、人ならざる者の証だ。
焼きゴテで押し付けるような原始的なものではなく、才能ある魔法使いが特別に生み出した。
一度刻印されてしまえば、二度と消えることがない呪い。
そして主人には決して逆らうことができなくなる。
ただこれに関しては流石の貴族連中も嫌がる。
品性は大事だ。
もし付けるにしても目立たない場所に刻印する。
首なんて見えるところなんて、自分は悪趣味ですと公言しているようなもの。
そもそも普通はつけない。
戦闘用奴隷のような、反抗されるとマズい場合に付けることが多い。
理不尽ではあるが、最低限の尊厳は守られるべきだという奴隷への尊厳を唱えるものも大勢いる。
アレンは話の通じない先輩に苛立ちを覚えている。ニールは頭がいい。わざと煽っているのだろう。
法律の観点からいえば理不尽な吹っ掛けをしているのはアレン。
更に平民のあいつが、
ゲームとしてはこれ以上ないほどの盛り上げ方、だが現実ではクソでしかない。
非情に面倒だが、こんなところで勝手にゲームーオーバーされても困る。
アレンにはまだ使い道がある。魔王を倒すにも、俺が強くなるにも、踏み台になってもらう役割がな。
「シンティア、下がってろ」
「ヴァイス、何をするのですか?」
「心配するなよ。仲裁だ」
そして俺は前に出た。
ニールが、上から俺を見下す。
ハッ、クソ野郎が。
ま、ここでは
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