213 極限

 ふたたび魔力を構える。

 だがそのとき、今まで言葉をほとんど発しなかった地竜が、ようやく言語を発した。


 思慮深く、四竜の中で一番賢いと聞いたことがある。

 一番対話に向いているだろう。


「……問おう。なぜ我らを付け狙う?」

「勘違いするな。俺たちは村を守りにきただけだ。水竜を攻撃した奴らでも、つけまわっているわけでもない」

「信じるな地竜! こいつらは人間だぞ」

「そうだ。それにもう終わる。満身創痍ではないか。それに準備が終わった」


 その瞬間、風竜がとてつもない息吹を吐く。

 攻撃ではなく、魔法だ。


 訳が分からない。しかしすぐにわかった。

 飛行魔法が付与されていた魔物が落ちていく。


 広範囲の魔力解除、それも――一瞬で。


 俺たちは地力の飛行魔法に頼り、何とかその場にとどまった。

 だがもう足場はない。


「これで終わりだ。最後の言葉を聞いてやってもいいぞ」


 風竜が見据える。地竜はもう横からを口を出すつもりはないらしい。


「ここから……立ち去れ」


 そして俺が言い切る。

 オリンとリリスが静かに笑みを浮かべ、トゥーラ、ビアドが笑った。


「そうか。なら――死ね」


 火竜の業火が、俺とオリンに飛んでくる。

 だがもうデビは――復活してる。


「デビビ!」

「ヴァイスくん!」


 オリンが一匹だけ空に逃がしていた魔物に捕まって、空高く飛んだ。

 俺はデビを足場にして回避する。

 リリスとトゥーラは動けないが、ナイフと一撃必殺ワンヒットキルを放った。


 次の狙いは火竜だ。

 今はただ、全力で一匹ずつ倒す事だけを考える。


 こいつらの目は特殊だ。

 魔力で俺たちを見ている。


 だからこそ森の中でも視認していただろう。

 しかしそれは時として牙を向く。


 魔力の業火はとてつもない。ゆえに、見失う。


 火竜は、俺とオリンの姿が見えなくなった。

 だがしかし、風竜がカバーに入る。


 «魔力解除の息吹を放つ»


 ――視えている。


防御シールド


 防御を四枚重ねで詠唱、だが一つずつ解除される。

 とはいえ、飛行魔法は何とかとどまった。

 

 オリンは左手で、俺は魔法剣デュアルソードを鱗に突き立てた。


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