258 襲撃

 気づけば、いつもよりも優勢だった。


「……お、おいこれヴァイス勝ってるんじゃないか?」

「ボクもそう思う……」


 ササミとオリンがささやく。

 隣の、アレンとシャリーも。


「勝つ……?」

「どうだろう……もしかして」


 周りからもそう見えているのならば、俺と同じ気持ちを抱いているのだろう。


 今度こそ勝つ。


 だが対面のセシルに視線を向けてみると、優勢にもかかわらず、俺は悟ってしまった。

 おそらく負けるだろうと。


 なぜなら彼女は、とても嬉しそうだったからだ。

 危機的状況が、たまらなく楽しいのだろう。


 そして予感は的中した。

 

 考えもしなかった手、およそく三桁以上の未来を考えてないとありえないほどの一手を打たれ、気づけば戦局が覆っていた。

 周りが驚きで目を見開く。


 しかし俺はまだあきらめていない。


 セシルなら諦めないからだ。


 そして、たった一つの希望が見えかけたそのとき――。


 外が、白く光り輝いた。

 これは、シャリーの罠だ。


「シンティアさんたちを急いで呼んでくる――」

「ちょうど上がりましたわ」


 するとそのタイミングで、湯上りのシンティア、リリス、カルタが現れた。

 乾かす暇も与えないとは、魔界人め。


 各自、所定の場所に移動しようとしたとき、突然、外から魔力が溢れた。


 急いで窓から見ると、何もない所から扉が開いて、魔物が大勢現れた。


 原作で魔界人が魔物と現れる事はなかった。

 だが――想定内だ。


「予め予定していた通りに行動するぞ。魔界人の見た目は人間と同じだが、奴らは魔族の手先だ。生死は問うな。――特にアレン、わかってるな?」

「心配しないでいい。僕は手加減しないよ」


 お前がそう言うとは驚いた。

 だが成長しているということか。


「ファンセントくん、すべてが終わったら続きよ」

「ああ」

「それと、先に言っておくけど、私のこと助けないでね」

「何の話だ?」

「秘密」


 別れる前、セシルが変なことを言った。

 よくわからないが、まあいい。


 こい魔界人ども、俺が全員叩き潰してやる。

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