366 メロメロンイッチ

 たゆん揉み放題を賭けた文化祭が終わり、いつもの日常が戻ってきていた。

 驚いたのは、売上が同率だったことだ。

 上級生の凄まじい秘密兵器の連続に完全敗北を覚悟していたが、流石ノブレス・オブリージュの主要キャラクター。

 コスプレカフェが大人気だった。

 勝者は俺たちのクラスとシエラたちのクラス。その結果、お互いに一つずつ何か言うことを聞くことになった。

 俺としては無効でよかったのだが、一応筋は通しておこうということだ。


 また決まったら教えるわよ、とシエラに言われたので、いつ連絡来るのか待っている。


 それとは別に、アレンと話していたことを実行に移そうとしていた。

 以前セシルに頼んでオークションで落としてもらい、襲撃を受けて守り抜いた古代魔法具『記憶の回帰』を使って罠を仕掛け、魔族を誘いこむというものだ。


 ただこれには問題がいくつもある。

 俺たちは貴族だ。情報操作は難しくないが、どこで・・・罠を仕掛けるのか、ということ。


 様々な議論が交わされたものの結論は出なかった。

 しかし非常に有益な噂話を聞いた。


 それは、魔族と繋がっている、という人物が夜会で現れた、というものだ。

 話の筋は何とニールからだった


『詳しい事はわからないが、政界は金がすべてだ。匂いをチラつかせれば釣れる可能性は高いだろう』


 よって、その人物を探すことになった。

 既に手筈は整えている。

 とある夜会に参加し、星を探すのが今回の任務。


 本分は学生だ。時間には限りがある。

 よって、成績の上位で試験を免除された二人が行くことになった。


 一人目は俺だ。そして、もう一人は――。


 ノブレス魔法学園の外。 

 季節は秋、少し寒いが、待っていた。


 そこに現れたのは天才バトル・ユニバースプレイヤー、艶やかな黒髪の眼鏡、セシル・アントワープだ。


「遅くなってごめんなさい。用意に時間がかかってしまって」

「気にするな」


 手に持っていた重たそうな衣装ケースを奪うと、ありがとうと礼を言ってきた。

 馬車へ向かう途中で、セシルが申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


「シンティアさん、本当に納得してたの? リリスさんも」

「そうだな。一応・・問題ない」


 一応、と付け加えたのは、本当に一応だからだ。

 昨晩は色んな意味で凄まじかった。リリスも、それはもう凄まじかった。

 思い出したくもないくらい、凄まじかった。


 馬車に乗り込み、まずは王都へ向かう。


 そこから船を乗り継ぎ、目的の国まで少しかかる。


 もし、その人物を見つけたら仲間のフリをする。

 今やヴァイス・ファンセント、つまり俺は厄災を退けたと有名ではあるが、そのあたりは何とでもある。

 悪評を使って近づき、魔族の動向を調べていく。

 成績の順番もあって、アレンとシンティアだけが遅れて来る予定だ。それはちょっと気に食わないが。


「ファンセントくん、本当に私でいいのかな」

「何が不安なんだ?」

「……みんな違って私は魔力が多いわけじゃない。もちろん、戦える自信はある。ただ――」

「心配するな。身体を動かすのは俺の役目だ。駒のように使えばいい」


 原作、ノブレス・オブリージュをプレイしていた身からするとこれ以上のペア相手はいない。

 それに楽しみだ。間近で頭脳を発揮するところが見れるかもしれない。

 これぞ、役得だよなァ。


「……そんな言い方はしないで。私は、ファンセントくんを信頼してるから」

「そうか。悪かったな」

「ふふふ、あなたのそういう所良いと思うわ」


 どういう意味だ? と思っていたら、セシルが鞄に手を入れた。

 ごそごそ。


 これは、あれか……ハッ、さすがセシル。


 早朝すぎて飯を食う暇がなかった。

 長旅の準備もあったし、王都までも時間がかかる。


 つまり、サンドイッチだ。

 

 初めてセシルと出会ったときも、バトル・ユニバースをしながら食べてたっけな。

 メロメロンイッチだと最高だ。


 さあ、何が出る!


「……なんだそれは?」

「凄いでしょ? これ、魔法磁石がついてて、揺れに対応してるんだって。ずっと機会が欲しかったのよね」


 満面の笑みで、セシルが取り出したのは折り畳みの盤だ。

 裏返すと磁石で取り付けられた駒がある。

 子供がおもちゃに触れているかのようだ。こうしてみるとただのガキだな。


 てか、俺のメロメロニッチ……。


「ファンセントくんで良かったわ。いっぱい遊べるしね」

「いや、確かに着くまでは暇かもしれんが……」

「まずは一戦しましょ?」


 キラキラした目で誘いやがる。

 まったく、わかってんのか? もし俺たちが魔族を罠に仕掛けようとしてるとバレたら、命を失いかねないんだぞ。


 まあでも肝が据わってるってことか。


「いいだろう。だが、今度こそ勝つぞ」

「はい。楽しみだわ。――よろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いします」


 そして試合の火ぶたは切って落とされた。


「負けました」


 先に声を上げたのは、俺だったが。


「凄く強くなってたわ。――あ、先に朝食にしましょうか」

「おいこれセシル、もしかして……」

「メロメロンイッチよ。ファンセントくん、朝食べてないだろうと思って」

「……流石天才だな」


 そして頂くメロメロンイッチは、最高に美味しかった。



「負けました」


 ちなみにまた負けた。



 ――――――――――――――――――――

 お久しぶりです。菊池快晴です。

 書籍の怠惰な悪辱貴族三巻を鋭意制作しているのですが、体調不良なども重なり遅くなっています。


 もう少しすれば色々な情報とかもお伝えできると思うので、お待ちいただいている方はお楽しみにして頂けると幸いです。


 さて、たゆん文化祭が終わり、次はセシルとの旅となります。

 当面はヴァイスとセシルばかりになるかもしれません。


 また、新連載を開始しました。

 タイトルは【いずれ破滅する七つの大罪の怠惰に転生した俺、破滅回避のために努力していたら、なぜか残りの六人(極悪美少女)に生涯忠誠を誓われた。それよりこいつら愛が重すぎるだろ!?】です。

https://kakuyomu.jp/works/16818093094765597393

 フォロー、☆☆☆、ぜひよろしくお願いいたします。

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