御祭-24
学校に到着した国巳は自身の教室に行かず、職員室へと向かった。
「失礼します」
国巳は軽く頭を下げて職員室へと入ると、目的の生田成美を探す。
だが、その姿はなく近くを通りがかった教員に成美の所在を聞こうとする。
「先生」
「何?」教師はいきなり声を掛けられ驚いた顔をしながら、用件を聞く。
「生田先生は?」
「さぁ?」と首を傾げる教師は「急ぎの用があるなら、放送で呼ぼうか?」と提案する。
「いえ、そこまで急いでいるわけではありませんので」と答え、そそくさと職員室を出た。
そして、国巳が探している生田成美は今何処に・・・・・・
燐は学校に登校することなく、泉巡査と学校周辺で聞き込みを行っていた。
国巳家が所有するバイク、車を見ていないかという目撃証言を取るためだ。
「ここもダメだ」
店から出た明野巡査はぼやく。
「知らないけど、刑事の仕事ってこんなものじゃないの」と燐はへこたれる様子を見せることなく次の店に向かっていく。
そんな燐を見て、数々の事件を解決に導いてきた分だけで色んなことを経験したんだろうそう思った明野巡査は、気合いを入れる為に両頬をパンッパンッと叩く。
「よしっ!!」
「泉ちゃん、行くよ!!」
立ち止まっている明野巡査に声を掛けると「うん」と答え店まで翔っていく。
次に入った店は、町中華の店であった。
店に入ると店の奥で仕込みをしていた女将さんが、開店前の旨を伝えるのだが明野巡査が見せた警察手帳で聞き込みに来た刑事だと察し、厨房から出てきた。
「ごめんなさいね。勘違いしちゃって」と謝罪から入られたので「いえ、こちらこそすいません。仕込みの最中に」と返した。
「それで、犯人は見つかったの?」
いきなりの質問にびっくりして固まってしまう明野巡査。
「犯人って、高校の事件についてですか?」燐が女将に尋ねると「あら、ごめんなさい。高校の爆弾事件の聞き込みだったのね勘違いしちゃって」と女将は恥ずかし笑いをしながら答えた。
「確かに高校の事件について聞きに来たんですけど、ここでも事件があったんですか? もし宜しければ、教えてくれませんか?」と燐は女将に頼む。
「ええ、良いわよ。昨日の夜なんだけど・・・・・・」
昨日の夜、店の前に一台のバイクが駐車した。
勿論、店には駐車場はなく、路上駐車となるのだがそんなことお構いなしといった感じでバイクを停め男が入店してきた。
年は若く十代後半から二十代前半といった感じの男で、入店するなり店の壁に貼られたメニュー表を見て、回鍋肉定食を指さし席に座った。
女将も無愛想な客が来たなと思いながら、厨房に居る主人に注文した料理を伝え料理が出来上がるまでの間、店に置いてあるテレビを見る。
男はずっと下を向き、スマホに目を向けていた。
「出来たぁ~」
主人が回鍋肉の載った皿、スープの入った茶碗をカウンターに置いた。
女将は大慌てで、自分の横に置いてある業務用炊飯器からご飯を茶碗によそいそれぞれの皿を盆に載せ男の前に品物を置いた。
男は並んだ料理を見て、大きな舌打ちをした。
女将は文句の一つでも言ってやろうと思ったが、今時の若い者はすぐにスマホのカメラをこちらに向けネットに一部始終を流し店の評判を落とすような事をされるのを避ける為、何も言わなかった。
男は10分もかからないうちに定食を食べ終えると、何事もなかったように店を出て行こうとする。
当然、女将は男を呼び止めたが返事はなく店を出て、バイクのエンジンをかける。
厨房から出てきた主人が男を逃がさまいとバイクの前に立ち塞がったが、男は主人をひき殺そうとアクセル全開でバイクを走り出させた。
間一髪、店に居た女将が主人を店の中に引っ張り入れ、大きなけがを負う事はなかった。
「てな、事があってね」
「なんか、最初から食い逃げする気みたいな行動ですよね」燐は思った事をそのまま言った。
「本当にそう」
「あの、警察には」
「勿論、通報したわよ」
「そうですよね。泉ちゃん、変な質問しないでよ」燐にそう注意され「ごめん」と謝る明野巡査。
「もしかしてなんですけど、逃げたバイクってこれだったりします?」
燐は国巳のバイク写真を見せた。
「あ、これよ。これ。でも、ナンバーまではちょっと覚えてないや。でも、このバイクよ」
女将はきっぱりと断言した。
だが、女子二人は互いの顔を見合わせ、納得のいかない感じといった顔をするのであった。
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