会長-24
「お~い! 居るかぁ~」
燐はそう言いながら、熱海探偵事務所の戸を開ける。
ソファーに寝転がりながら、片手を挙げて返事をする長四郎。
「ねぇ、例の事件だけど。今、大騒ぎだね」
長四郎が見ているワイドショーを見ながら、燐が話し掛ける。
「そだねー」
「事件解決に導いたのに、釣れない返事して」
「当たり前だろ。犯人があっさりと自供した事件なんか興味ねぇよ」
「興味ねぇよ。じゃないでしょ。一大事件でしょうが」
「ふ~ん」と言いながら、ソファーから身体を起こす長四郎は「ラモちゃん。学校は? 今日は、平日の昼間だぜ?」と質問する。
「春休みだから、大丈夫」
「大丈夫って。だとしたら、こんなしけた探偵事務所に来るんじゃなくて、友達と花見でも行けば。あ、友達居なかったな」
「んだと~」
燐から鉄拳制裁を受ける長四郎は、座っていたソファーから吹き飛ばされる。
「恐るべき鉄拳制裁」
長四郎はそう言いながら、ガクッと意識を失うのだった。
「要らない事を言うから、こんな目に合うんだよ。べぇ~」
燐は長四郎のアカンベ~をし、そして、テレビへと目を向ける。
「これは教育者として失格だ。自分の生徒を殺されたからといって復讐で殺人をするなんて許される訳がない!!」と男性のコメンテーターが発言すると燐はすかさず「何も知らない癖に知ったような口を聞いてんじゃねぇよ。このタコっ!!」とコメンテーターに向かって悪態をつく。
「ラモちゃんは怖いなぁ~」
「あんたもそう思うでしょ。いくら、生徒と恋愛関係になったとしても」
「そうは言っても、世間はそれを許しちゃぁ~くれないのよ」
「それはそうだけどさ」
「という事で、さ、お帰りなさい。女子高生」
「これで、終わりにしようとさせてない?」
「あ、分かった?」
「見え見え。栗手君がどうなったのかとか、知りたくないの?」
「知りたくない。未成年者だけで報道規制かかっているんだし」
「それを調べられるのが、探偵の助手としての特権よ」とドヤ顔で答える燐。
「特権じゃないだろ。職権乱用に近いな」
長四郎のその一言に咳払いして、誤魔化す燐は続ける。
「それで、栗手君は素直に自供しているらしいんだけど。問題は」
「問題は、他の連中だろ?」
「そう。水野なんかはさ、「俺は、知らない。生徒達が勝手にやった事だ」って言い張っているらしいんだけど、付都先生が録音したデータがあるからその証言が通る事は無いって。絢さんが言ってた」
「ああ、そう」
「そんでさ、生徒も生徒でしらばっくれているんだって。有り得なくない?」
「人間。自分が可愛いもんさ。しらばっくれても無理ないだろ。一年前の事件掘り返されて、しかも自分達が容疑者になったんだから。これからの人生が台無しなんだぜ?」
「ま、そう言われれば、そうか」
「と、納得したラモちゃんはお帰りなさい」
長四郎は燐を事務所の玄関に移動させると「良い春休みを~」そう言って、事務所の戸を閉め鍵をかけた。
「あ、コノヤロー!」
締め出された燐は、事務所のドアを叩き続けるのだった。
完
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