第弐拾肆話-議員
議員-1
「はぁ、はぁ」
男の荒い息遣いが、深夜の住宅街に響き渡る。
男は顔を隠すようにフードを目深に被り、その場を立ち去っていく。その背後には、顔中血まみれの男の死体が転がっていた。
一ヶ月後、ワイドショーでは、政治家秘書が相次いで狙われている事件のニュースを大きく取り扱っていた。
「この事件、早く解決しないと政治家の人達も安心して政治活動出来ませんよね」
ニュースキャスターが、コメンテーターに意見を求める。
「そうですね。一刻も早く解決してもらわないと」
「何が、一刻も早く解決してくれないとだよ。他人事だと思って適当なこと言うなって」
私立探偵の
「何、テレビに向かって喋ってんの?」
居るはずのない人間の声が聞こえた長四郎は「うわぁ!」と大声を上げながら、座っていたソファーから飛び上がる。
「ビビってやんの」
「ラモちゃんかぁ~ 驚かすなよ。今日、平日だぞ。学校は?」
「ん? 抜けてきた」
「何が抜けてきただよ。サボって来ただけだろう?」
「ひっど~い。私はこう見えて、成績優秀枠で通っているから、こうして授業を抜け出しても許される訳」
「そうですか」長四郎は呆れたといった口調で座っていたソファーに腰を下ろす。
「今日も暇なの?」
「暇って。つかの間の休息中なの」
「つかの間休息ねぇ~」
燐は訝しんだ目でテレビを見る長四郎を見つめる。
「で、今日は何しに来たの?」長四郎が用件を尋ねると「暇だから、来た。只、それだけ」と答えながら事務所の冷蔵庫から、燐が以前に買っていたオレンジジュースの紙パックを手に取り、そのまま直飲みする。
そんな時に、事務所のドアがノックされる。
長四郎は慌ててテレビを消しながら、「はい。どうぞぉ~」と返事をした。
「失礼します」そう言いながら、ドアを開けて入ってきたのは、年の頃は三十代前半の高級スーツを来た男であった。
「こちらへどうぞ」
長四郎はそう言って、自分が座っているソファーへと男を案内し「ラモちゃん、お珈琲を用意して」と燐に指示を出す。
「何で、私が?」
「あんた、助手なんでしょ。それぐらいやりなさいよ」
「へいへい。分かりました」
燐は舌を出して、珈琲を出す準備を始める。
「すいませんね。教育が行き届いてなくて」
「いえ、気にしてないので」と答えながら、男は長四郎に名刺を差し出した。
「私、参議院議員の西 天光の秘書をしております。
「頂戴します」長四郎は名刺を受け取り用件を聞こうと耳を傾けようとすると「
この西天光は数々の国会議員の不正を見つけ出しては追及する、今や時の女性議員であった。
「それで、こんなしがない探偵にどのようなご依頼でしょうか?」
「身辺警護をお願いしたく参りました」
「身辺警護ですか?」
思わぬ依頼に長四郎は驚いた顔で、小岩を真っ直ぐと見るのだった。
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