議員-2
長四郎の元に、参議院議員の西天光の身辺警護の依頼が来た。
「あの、その依頼は内ではなく警備会社とかに頼んでみては良いのではないでしょうか?」
「いや、貴方にやって頂きたいのです」と長四郎の提案を断る西天光の秘書・小岩が否定する。
「こんな事、言いたかないですけどね。自分は、格闘術とかに心得とか全くないんです。ですから、今回の依頼はちょっと・・・・・・・」
「ああ、誤解があったようですね。貴方には、身辺警護の指揮を執って頂きたいんです」
「指揮ですか?」
「はい」そう言って頷く小岩。
「分かりました。お引き受けしましょう。そういう事なら、こいつは大の得意分野ですから」
「ラモちゃん」
「ありがとうございます。では、明日から宜しくお願い致します。私は議員会館に戻らなくてはいけませんので失礼します」
小岩はそう言ってソファーから立ち上がり、二人に一礼してそそくさと事務所から出ていった。
「ったく、どうして依頼を受けちゃうのかな」
小岩が出て行ってすぐに長四郎が抗議する。
「女の腐ったみたいにグチグチ言うんじゃないよ!」燐はそう言って、長四郎の尻を引っ叩く。
「はい。分かりました」
痛みに耐えながら、長四郎はなくなく燐に従うのだった。
翌日、小岩の連絡もないままで、取り敢えず長四郎は一人、議員会館へと向かった。
すると、議員会館の前で見覚えのある制服を着た女子高生が立っていた。
「げっ」
長四郎が嫌そうな顔をして、議員会館の方へ歩いて行くと燐が長四郎に気づき近づいて来た。
「おっはよう~」
「学校サボって、議員会館か」
「おはようって、挨拶したらおはようって返すのが普通でしょうがっ!!」
燐は長四郎の足の脛を小突く。
「痛って!」
脛を抑えて屈む長四郎に「大丈夫ですか?」と声をかけられた。
「だ、大丈夫です」と答えながら、長四郎が顔を上げるとそこに居たのは、身辺警護の張本人・西天光、その人であった。
「あ、西さんだ」
真っ先に反応したのは燐だった。
「どうも」恐縮した感じで答える西に「こんな所で挨拶するのもなんですが、私、今日から西さんの身辺警護に当たらせて頂きます。熱海長四郎と申します」
長四郎は西に名刺を渡すと「小岩から話は聞いています。さ、どうぞ」そう言いながら、長四郎と燐を議員会館へと案内する。
何故か、制服を着た燐がすんなりと議員会館に入館でき、西の部屋へと来た三人。
西が部屋に入ると、仕事をしていた秘書達が一斉に立ち上がり「おはようございます!」と綺麗にお辞儀をして挨拶する。
「小岩、例の方々をお連れしたわよ」西が長四郎と燐に目を向けると「先生、申し訳ありません」と謝罪する小岩はすぐ様、長四郎達の元へと駆け寄る。
「どうも、すいませんでした」長四郎達に謝罪すると、「いえ、気にしないでください」と答え話を続ける。
「あの、どう見ても僕が指揮するような警備の人間は見受けられないんですが?」
「ああ、まだ雇っていないんです。取り敢えず、指揮する人間をと思いまして。ですが、今日には警備会社と契約を結ぶ予定です」
「そうでしたか。で、西さんが狙われるような心当たりはあるんですか?」
「熱海さんもご存知の通り、今、国会議員の秘書が相次いで襲撃される事件はご存知ですよね?」
「ええ」
「あ、そういう事か! 時の人である西さんが犯人に目を付ける可能性が高い! そう言う事ですね!!」燐が嬉しそうに言う。
「おい、本人が居る前でそんな事、言うんじゃないよ」長四郎はそう言って、目配せで申し訳なさそうに、西に頭を下げるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます