復讐-8
長四郎は早速、フロント対応の従業員にこう尋ねた。
「あの東京の客からで女性? なんですけどここに宿泊してませんか?」
「はい?」よく分からない質問をされて従業員は戸惑う。
「馬鹿っ! すいません。変な質問してしまって。あの東京からのお客でこちらに宿泊しているはずなんですけど」
長四郎のフォローのはずが燐もまた同様の質問を従業員にして、従業員は困り果てたといった顔になる。
「ラモちゃんも人の事、言えないじゃん」
「何を~」
面血を切りあう長四郎と燐を搔き分け、肥後が今度は尋ねる。
「
「花火詩様ですね? 少々お待ちください」
宿泊客管理をしているパソコンで紹介する。
「花火詩様は当ホテルに宿泊されています」
「部屋番号とか分かります?」
「808号室です」
「808ね」復唱しながらメモを取る肥後は質問を続ける。
「今、このホテルに居ますかね?」
「鍵をこちらに預けておられるので、居ないのではないかと」
「チェックアウトはいつですか?」
「明後日になっております」
「ありがとう。また、お話を聞くかもしれないけどその時は宜しく」
肥後は長四郎と燐の方を向くと未だに面血を切っていた。
「君たちはホントに仲良いね」
『仲良くないっ!!』声を揃えて長四郎と燐は否定する。
「え~」逆ギレされるとは思わず、少し凹む肥後。
すると、「いい加減にしなさい!!」2人を𠮟責する声がした。
声のした方を向くと二日酔いで寝込んでいたはずの絢巡査長がそこに居た。
「ったく、こういう所でじゃれあわないの!!」
「私達、じゃれあっていたわけでは・・・・・・」
「じゃかぁしい!!!」
燐の言葉を一喝する絢巡査長。
「あ、俺聞きたいことがあったんだ」
長四郎は絢巡査長から逃げるようにフロントに何かを聞きに行く。
「絢さんって、二日酔いになると不機嫌になるんですか?」恐る恐る燐は質問した。
「小娘、私に質問するな。言いな?」
「は、はい」
肥後もその様子を見て昨日、飲ませすぎたと後悔していた。
「肥後さん、俺少し調べたいことがあるので、ラモちゃんと絢巡査長を宜しくお願いします」
聞き込みを終えた長四郎は肥後にそう告げて、ホテルを出て行った。
「俺、一人は嫌だよ」その瞬間、肥後の背後から鋭い殺気が感じられた。
「おっさん!」絢巡査長にそう呼ばれ「はい!!」と背筋を伸ばして返事する。
「いい返事だ。おっさん、歌うぞ」
「歌う? 何をですか?」
「バカヤロォォォォ!! 歌うんじゃない。詩を追うんだよ」
「ああ、かしこまりました。今、捜査本部に捜査員を集合させますので」
「おう、早くしろよな」
絢巡査長にそう言われ、肥後は慌てて電話をかけ始めて集合の旨を伝える。
「さ、行きましょう」
「うむ」
肥後にそう促され、絢巡査長はそう返事し燐を連れて捜査本部に場所を移すのであった。
一方、ホテルを一人後にした長四郎はタクシーでホテルから10km離れたところにある住宅街へと移動していた。
タクシーのおっちゃんも物珍しそうに長四郎を運転しながらちらちらと見る。
「お客さん、本土の人よね?」
「そうですけど」
「あそこ行っても何にもないよ」沖縄独特の訛りで話すおっちゃんに「知っています」とだけ答える。
「お友達でも居るの?」
長四郎は「そうです」と答えようと思ったのだが、ここは噓交じりだが本当の事を答えようそう思い「実は浮気調査なんです」と答えた。
「えっ!? お客さん、探偵さんか何か?」
「はい」
「でも、本土の探偵さんが沖縄まで来て浮気調査何てやるの?」
「実は・・・・・・・」
そこからありもしないでっち上げの話をした。
依頼主は、東京に住むごく普通の奥さんからの依頼で主人が沖縄へ事あるごとに出張で家を空けるので、沖縄に女がいるのではとの事で依頼を受けたという事を伝えた。
すると「沖縄まで来て女を作るってなんか凄いね。その人」と感心するおっちゃん。
「今日は旦那の沖縄での素行調査なんです。それで申し訳ないのですが」と言いかけた時、「料金は少し割り引いてあげるわ、今日は貸し切りでしとくから」とおっちゃんはそう言い無線で長四郎の事情を本部に報告すると了承する応答が長四郎にも聞こえた。
「という事になったから」
「ありがとうございます!」
それからすぐに、目的のアパート前に着いた。
おっちゃんも熟練のタクシードライバーらしく、なるべく目立たないところかつ監視しやすい場所にタクシーを停車させてくれた。
長四郎は部屋番号を確認する為、タクシーを降りアパートへと向かった。
目的の部屋は、203号室だ。
ラッキーなことに集合ポストの所に名字が記載されていた。森井という名の名字が。
すぐさま、それを写真に納めその場を後にしタクシーに戻った。
「お帰り、どうだった?」おっちゃんに首尾を聞かれ「上々です」と答える長四郎はアパートを観察する。
それから約2時間、変化はなく無駄足だったか。そんな事が脳裏を過っていたタイミングでスマホに燐から着信が入った。
「どうした? ラモちゃん」
「大変!! 警察署に居た5人組の1人が逃げた!!!」
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