御祭-26
長四郎と佐藤田警部補は変蛇内高校を訪れ、校内に居た遊原巡査と合流した。
「班長。お疲れ様です」
会議室に入ってきた佐藤田警部補に挨拶する遊原巡査。
「お疲れさん。どう? 取調べは順調?」
「はっ、順調に進んでおります」
遊原巡査はそう答えるが、佐藤田警部補が机の上に置いてある雑誌に目を向けると大慌てで机の上から払いのけ愛想笑いで誤魔化す。
「さ、先生。もう結構ですよ」
「そうですか。では、失礼します」
成美は一礼して、会議室を出ていった。
「行かせて良いんすか?」
「それが狙い」
長四郎はニヤッと笑いながら、遊原巡査の質問に答えた。
解放された成美が廊下を歩いていると、国巳が「先生」と声を掛けてきた。
「何、どうしたの?」
驚いて成美は身体を縮こまらせながら答えると同時に、この時間は授業中ではないのかそう思った。
「いや、先生が例の事件で疑われていると聞いて心配しましてね。ずっと、探していたんですよ」
「なんで? それより、今は授業中じゃないの? 授業はどうしたの?」
「生徒が授業をほっぽいて、心配しているというのに」
国巳というと同時に、スタンガンを使い成美を気絶させる。
床に倒れた成美を国巳は抱きかかえ「先生。ダイエットした方が良いですよ」と余計な一言を言い姿を消した。
「お、早速動き出したみたいですね」
スマホのGPSを見ながら長四郎は呟いた。
「何が動き出したんですか?」
「さっきの先生でしょ」佐藤田警部補が遊原巡査の質問に答えた。
「まさか、先生をおとりに?」
「正解」長四郎は悪びれる様子もなく即答した。
「いくらなんでも、それは・・・・・・」
「それは、違法だ。そう言いたいんだろ? 遊原」
「はい」
「お前が怒る気持ちも分かるが、ここは探偵さんの提案に乗っかろうや」
「承服しかねます。班長、事件に関係ない者を危険な目に遭わせるのは納得出来ません!」
「遊原。言っている間に探偵さんは居なくなったぞ。さ、どうする? ここで、俺に対する不満をぶつけるか。誘拐された先生を救出しに行くか。言い忘れたが、俺は命令や強制はしない主義だから自分で決めろ」
遊原巡査はこの状況でも全く動じない中年刑事を見て、とんでもない悪党の部下になったものだと思いながら決断を下す。
「ここで班長と言い争って仕方がないですから。助けに行きますよ」
「そうか」
「それと、この件が問題になった時は班長が責任取ってくださいね」
遊原巡査はそう佐藤田警部補に釘を刺し、長四郎の後を追う。
校舎を出ると、長四郎が待っていた。
「遅いじゃないの」遊原巡査に文句を言うと「すいませんね」と軽い謝罪をし、駐車場に止めてあるパトカーに乗り込む。
運転席に遊原巡査、助手席に長四郎、後部座席に佐藤田警部補が座り、パトカーは走り始めた。
「で、相手は今どこを走っているんですか?」
「日比谷通りを。あ、待て。芝三丁目で右折しやがったぞ。お、今度は国道一号線に入りやがったな」ナビ役の長四郎が適当なナビをするので「どこ行けば良いんですか?」遊原巡査は車をどの方向に走らせれば良いか困っていると。
「取り敢えず、首都高に載れ。遊原」
後部座席の佐藤田警部補は口を開いた。
「首都高ですか?」
「遊原君、佐藤田さんの言う通りに」
「はい」遊原巡査は首都高の入り口に向けて、パトカーを走らせた。
「あ~ 奴さんは埼玉に向かうみたいだな」
「埼玉? そこで、先生を殺そうって寸法ですか?」
「殺すかまではどうかだが、先生を犯人に仕立て上げようとしているじゃないかな」
「なんにせよ。早くしないと先生が危ないから、遊原。事故しないようにだけな」
「はいっ!」
遊原巡査はパトカーのサイレンをボリュームマックスで首都高を走らせるのだった。
その頃、燐と明野巡査は食い逃げ犯の男を見つけ捕まえいた。
明野巡査が近所のコンビニやスーパーの防犯カメラ映像を見せてもらい事件当夜にバイクを走らせる男のヘルメットから持ち主を導き出したのだ。
男のヘルメットは、限定品のヘルメットで購入者を販売会社から聞き出した上で事件現場の付近の購入者から話を聞こうとしたところ、逃亡するという如何にも犯人にらしい行動を取ったが、逃亡も虚しくすぐに捕まった。
「あんた、近所の町中華で食い逃げしたでしょ?」
燐の質問にコクンと頷き、認める男。
「あなたは、この男から食い逃げするよう指示を受けたんじゃないの?」
明野巡査は国巳の写真を見せると「そんな男は知らない。食い逃げする前の番に郵便ポストに入っていたんだ。バイクを無料で貸してやる代わりに食い逃げしろっていう手紙が」
「それだけじゃないでしょ。お金貰ったんじゃない?」
燐の問いかけに男は答えない。
「どうなの?」
「成功報酬で十万円貰ったよ」
燐と明野巡査は、これで長四郎達と合流できるそう思った。
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