御祭-27
国巳豹牙と生田成美を乗せた車は東所沢にある倉庫に来ていた。
「ここはどこっ!?」
倉庫に着いてすぐに叩き起こされた成美は自分の居場所を聞き出そうとする。
「そんなこと聞いて何になるんです。先生」国巳はそう言うと、不敵な笑みを浮かべる。
「先生。うちの子の為に死んで頂けますか?」
国巳母は成美を車から引きずり降ろし、倉庫へと入っていった。
「私を殺しても、意味はないわよ」
「先生。意味はありますよ」
「どういう意味?」
「先生には、この子の身代わりになってもらいます」
国巳母はそう言いながら、国巳を抱き寄せる。
「それが親のすることですか?」
「親だったら、子供をしかって反省を促せるのが役目じゃないんですか?」
「親の役目? 役目は果たしてますよ。将来が望める子供とそうでない大人どちらを選ぶかなんて答えは決まってますよね?」
国巳母は持って来たハンドバッグの中から果物ナイフを取り出す。
「あなた達正気なの?」
ナイフを持って近づいてくる親子二人に成美は最後の確認のように問いかける。
「正気ですよ」国巳が即答すると同時にナイフを振りかざす国巳母。
もうダメだ。成美はそう思ったが、一向に身体に痛みが走って来ない。
恐る恐る目を開くと、国巳母は手を抑えてわぁわぁと喚いていた。
「間に合ったようだな」
声がした方を振り向くと長四郎が返ってきたブーメランをキャッチしたところであった。
「はい。それまで、それまでですよ」
佐藤田警部補の制止に国巳母は苦々しい顔をするのに対して、国巳は動じず平然とした顔をする。
「さ、この状況でどう弁解するのかな。国巳君」
長四郎がそう言うと「いやぁ~ 全ては探偵さんの作戦か。参ったなぁ~」と言う国巳の顔は笑顔であったが目は笑っていなかった。
「あんた達、こんなことして許されるとでも思っているの!?」国巳母は激昂する。
「人殺そうとしている奴に言われてもなぁ~」
「本当にそうですね」
遊原巡査は長四郎につられて、少し笑ってしまう。
「悪い。悪い。不謹慎だったな」長四郎はそう前置き「君の狙いはなんだ? あんな爆破事件を起こして何になる?」と言うと国巳は「探偵さんは、どう推理しているんですか?」と逆質問してきた。
「そうだな。教師への嫌がらせ、はたまた、学友がびっくりするところが見たかったとかか?」
「流石は探偵さん。良い線ついてますね。でも、少し違う」
「どう違うって言うんだ?」佐藤田警部補が尋ねる。
「退屈していたんですよ。学校生活に」
「それで爆破事件を起こしたっていうのか?」あまりにも短絡的な犯行動機に啞然とする遊原巡査。
「そうですよ」
「君、退屈凌ぎって言うけど、かなりスリリングな事をしているじゃない」
佐藤田警部補がそう言うと「どういう事です?」国巳は説明を求める。
「どういう事って。君、深中都姫さんを殺しているよね?」
「豹ちゃん。本当なの?」
寝耳に水といった顔の国巳母が口を開いた。
「・・・・・・何を証拠に」
「証拠なら。遊原」
「はい」
遊原巡査はスマホを取り出して、動画を再生させる。
「この映像は、深中都姫さんが亡くなられた当日の防犯カメラ映像です」
動画には病室に入っていく国巳の姿が映っており、その数分後には足早に病室から出ていく国巳の姿が映っていた。
「この時、彼女の病室に行って何を?」
「お見舞いですよ。刑事さん」
「お見舞い。意識のない彼女に?」
「ええ、まぁ」
「ふ~ん」と気のない返事をする佐藤田警部補は「じゃあさ、続きを見てもらおう」と言い遊原巡査に動画の続きを再生するように目で促す。
遊原巡査が続きの動画を再生する。国巳が病室を去って一分も経たないうちに看護師が異変に気づき病室へと駆け込んで行くのが映されていた。
「君が出て行ってすぐに彼女の容体は悪化した。何故だ? 因みにだが、供給用酸素のチューブが抜かれていたそうだ。それが、彼女の命を奪ったというのが病院の見解だ」
佐藤田警部補が言い終えると、国巳は高笑いし始める。
「いや、日本の警察ってのは優秀ですね。状況証拠とはいえ、そこまで調べているとは・・・・・・ そうですよ。彼女を殺したのは、僕です」
国巳はあっさりと深中都姫の殺害を自供した。
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