御祭-25
国巳はその日、クラスメイトから気味悪がれるほどの笑顔で過ごしていた。
その理由は、成美が今回の爆破事件の重要参考人として警視庁で取り調べを受けているという噂で学校中が持ちきりであったからだ。
「ねぇ、何がそんなに可笑しいの?」クラスメイトの一人に聞かれた国巳は「可笑しいよ。こんなに面白い事はないじゃない」と答えると質問したクラスメイトは答えになってないといった顔をして国巳から離れていった。
噂の張本人はというと。
職員室隣りの会議室に軟禁されていた。
軟禁している相手は、遊原巡査であった。
「あの、何か喋りませんか?」
終始会話もなく息がつまった成美はたまらず、雑誌を読む遊原巡査に話しかける。
「そうですね。なんか、すいません」と遊原巡査は頭を下げて謝罪し話し始めた。
「え~っと、教師になって何年ですか?」
「まだ、一年経ってません」
「へぇ~ 本当に教師って不足しているんですね」
「ま、急遽担任に抜擢されて驚いてはいるんですけどね」
「そうなんですねぇ~」遊原巡査は愛想のない返しをして、雑誌に目を落とす。
「あの形だけでも、事情聴取しません?」
「先生って、事件に関わっていないんでしょ?」
「え?」
遊原巡査の思わぬ一言に成美は驚いた。
「いや、俺は班長から、あ、上司から「先生の事情聴取をするように」って言われたんですけどね。なんとなくですけど、先生が事件を解決する為の協力者じゃないのかなって思ったんで」
「そうですか・・・・・・ その上司の方は今何を?」
「さぁ?」遊原巡査は肩をすくめる。
でも、遊原巡査の頭の片隅に自分の上司がどのような行動を取っているのか、雑誌を読みながらずっと考えていた。
そして、そんな行方不明の上司は何処で何をしているのかというと。
「探偵さん。本当に引っかかってくると思う?」
横に座る長四郎にそう質問する佐藤田警部補。
「どうでしょうねぇ~ 引っかかってくれたら、嬉しいんですけどね」
そう答える長四郎は目の前にある資料を読みこむ。
長四郎と佐藤田警部補は今、株の売買記録を見ていた。
「いやぁ~ でも羨ましいぐらいに稼いでますね」
「本当に。俺、警察辞めてデイトレーダーにでもなろうかな? 警察給料安いし」
「警察給料安いんですか?」
「そらそうだよ。公務員は薄給なんだよ」
「へぇ~」
「ねぇ、探偵って儲かるの?」
「う~ん」と腕を組み少し考えてから長四郎は答え始めた。
「貧乏暇なしって感じですね。意外かもですけど浮気調査って、ひっきりなしに来るんですよ」
「浮気調査がメインでやっているんだ」
「普段はそうですよ。変な女子高生が厄介事を持ち込まなければの話ですが」
「ふ~ん」
「ふ~んって。これ、本当の話ですよ」
「分かってるって」そう言う佐藤田警部補の顔は信じているのか、はたまた、信じていないのかどっちとも取れない顔をしていた。
「ま、そんな事はさておき、探偵さんこれからどうする?」
「泳がせるのも飽きたんで、そろそろケリを付けましょうか?」
「はいよ」
二人が椅子から立ち上がると同時に長四郎のスマホに着信が入った。
「はい、こちら香港亭」
「何が香港亭よ。ちょっと、気になる事があったんだけど」
燐はすぐに本題を切り出した。
「気になる事? 何?」
「それなんだけど、もう少し時間をくれない?」
「時間って。これから犯人とやり合おうっていう時に?」
「え!? そうなの!? どうしよう泉ちゃん」
隣にいるであろう明野巡査と相談し始める燐。
少しの間の後、話は再開した。
「分かった。先にやってて。私達も調べ次第、合流するから」
そこで、通話は終了した。
「何だって?」
「俺にもよく分かりません。ただ、先に犯人と話してくれとのことで」
「ふーん」と相槌を打つ佐藤田警部補は、顔をしかめ頭をボリボリと掻くのだった。
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