結社-21

 桑子が逮捕されて数日が経った。

 長四郎は依頼の一つもなく、気だるい昼下がりの中、珈琲を片手に好きな音楽を大音量でかけながらリラックスタイムを楽しんでいた。

 そんな中、事務所へと続く階段から慌ただしく駆け上がる音がしたので、身構える長四郎。

 勢い良く、事務所のドアが開き予想通りの相手が姿を現した。

「ラモちゃん。階段は静かに上がろうね。このビルに入っているテナントは内だけじゃないんだから」

「ああ、そう」と反省する様子も見せることなく燐は話を続ける。

「それより、あの事件のその後、聞いた?」

「聞いてない。興味もないからね」長四郎はそう答え珈琲を飲む。

「だと思った。だから、学校帰りに教えに来てあげたの」

 確かに不登校高校生の燐が珍しく制服姿である事に、今になって気づいた。

「不登校の暴力高校生が学校に行った帰りに、寄って来てくれたとはありがたいねぇ~」

 燐はニコニコ笑顔で長四郎の耳を引っ張る。

「痛たたたた。あ、ありがとうございます。お、教えに来てくださり至極光栄でございますぅ~」長四郎がそう言うと、「宜しい」と満面の笑みを浮かべ長四郎の耳から手を離す。

「それでね。例の警視庁の裏切り者分かったよ」

「普通に話、続けるのね」耳を擦って労りながら、燐の話に耳を傾ける。

「何と驚く事なかれ、村内刑事部長だったの」

「誰それ?」

「ほら、絢さん達に裏切り者の捜査をするように指示した人」

「そうなんだ」

「あんた、自分が解決した事件に興味ない訳?」

「ない」

「即答かよ。まぁ、そう言うと思ったし良いけど。そんでさ、あんたを殺人犯だって疑いかけてた刑事居るじゃん」

「そんな奴も居たな。ホント、失礼な奴だった。そいつが、村内刑事部長とやらの先兵だった訳か」

「どうして、分かるの?」

「これ書いている作者、単純だもん。寧ろ、バカ」

「それもそうだわ。ま、兎に角さ、旦那の難波塚児さんを殺害したのも澤って刑事だったんだって」

「へぇ~ 襲ってきた奴らじゃないの?」

「うん」と首を縦に振って返事をする燐。

「なんか、刑事の方が色々と物的証拠を残さずに殺せるとかで、他にも色々とやっていたらしいんだ」

「それは、それは。とんだ極悪刑事だこと」

「で、桑子の供述は大方、あんたの推理通りだったらしいよ」

「それは何より。でも、最後の最後で襲ってきた連中は村内刑事部長の差し金だろ?」

「うん。一川さんも言っていたけど、「長さんのおかげで一人の犠牲者を出さずに済んだばい。良かったぁ~」ってね」

「それは何より。アメリカでの経験が活きただけ、最後の最後で畳みかけてくるはずだろうなと思って多少ドンパチしても良い場所を選んだだけ」

「ドンパチ好きねぇ~」

 燐はそう言いながら、楽しそうに銃を発砲する写真を長四郎に見せる。

「あ、それ」

「これ、警察に見せたらどうなるんだろうね」

「いつの間に撮ったの。にしても、カッコよく撮れているじゃない」

「そこじゃないでしょ。良い? この写真晒されなかったら、これからは、銃を持ってドンパチしない事ね」

「へいへい」

「ちゃんと、返事して」

「ふぁい!!」

「宜しい」

 燐は満足そうに頷くのだった。


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